2016 Fiscal Year Research-status Report
癌性腹水症に対する腹水精製ディバイスの作成と携行式連続腹水精製灌流法の確立
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16K01425
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大橋 篤 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (30310585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 滋 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 教授 (20345896)
長谷川 みどり 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40298518)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 難治性腹水症 / 腹水濃縮再静注療法 / 還元型アルブミン / 癌性腹膜患者 / アルブミン再生 / 透析 / 限外濾過 |
Outline of Annual Research Achievements |
末期の肝硬変や癌性腹膜炎に伴う難治性腹水症の対症療法に腹水の穿刺排液が行われるが、排液は患者の貴重な蛋白質を喪失する。そこで、腹水ろ過器と腹水濃縮器を用いて、不要の細胞と過剰の水分を除去し約10倍程度濃縮した腹水を患者の血液へ戻す腹水濃縮再静注療法(CART)が行われている。初年度はCART施行患者の腹水中のアルブミン(Alb)の質的評価を行った。まず、市販のAlb製剤を対象にHPLC法でAlbの酸化型(HNA)と還元型(HMA)の比率を測定したところ、HMA%が健常者血清の半分であった。そこで、還元剤のシステイン製剤を添加しHMA%の増加を試みたが、一過性に上昇するも短時間で服した。次に、還元剤添加後1時間で透析するとHMA%が上昇し且つ長期間維持した。この結果を日本透析医学会と国際血液浄化学会で発表した。次に、CART症例の腹水中AlbのHMA%を測定したところ、肝障害症例患者の腹水中のHMA%は1割程度まで著減していた。肝障害でAlb合成能が低下し且つ少ないAlbが体内を長時間循環したため還元型が枯渇したと考えられる。また、癌性腹膜炎におけるCART症例のHMA%は正常血清レベルの症例もみられたが、CART施行回数を重ねると漸減していた。炎症や栄養障害などによる酸化ストレスでHMAが消費されたと推測された。そこで、先行研究のAlb製剤のHMAを長期間保つ技術をCART症例患者の腹水に応用すれば患者の腹水の還元型Albの質的向上が図れると考え、本学に倫理申請し同意を得た症例のCART処置の際に回路内に残った腹水を用い、先行の還元処置を施したところ、HMAが正常血清程度まで上昇し且つ約2週間程度効果が持続した。我々はCARTの細胞分離行程で濾液バッグに還元剤を加え、後半の濃縮行程の際使用する2次フィルタに透析と限外濾過を同時に施行する方法と装置を特許出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はCART症例の腹水中蛋白質についてAlbの質的評価ならびにHMAの再生法を確立することができた。次年度はCART検体のHMA再生処理の細胞レベルでの効果について、ヒト肝癌細胞HEPG2株を用いた添加実験を行い検証する必要がある。さらに、癌性腹膜炎患者のCART後の発熱腹水症状に対する炎症性の急性相蛋白質の実態について検討を始めた。婦人科関連のCART症例においては一部の症例で炎症性サイトカインが高値症例を確認した。このような症例ではCART後に発熱症状が顕著なため、還元型Albの再生処理以外に炎症性サイトカインを抑制する技術と細胞への影響評価を検討する必要があり、平成28年度後半から細胞培養実験に取り掛かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、CART検体のHMA再生処理の有用性をヒト肝癌細胞HEPG2株を用いた添加実験を行いAlb合成や炎症反応に関するmRNAの発現解析を定量RT/PCR法で検証する。次いで、癌性腹膜炎症例の腹水中には白血球や癌細胞などから炎症性サイトカイン類が産生されている。そこで、血液浄化療法で用いられる限外濾過や吸着の原理を応用し、腹水濃縮検体中の炎症関連物質の除去に最も効果的な方法を検討する。先ず、CART濃縮の際に大口径の細孔径を有する中空糸と多量の補充液を用いた限外濾過による除去を試みる。次にアフェレシス療法で使用される吸着ディバイスでサイトカインの除去を試みる。次いで、除去処理した腹水の精製処理効果を判定するためサイトカイン除去効率やヒト肝癌細胞株(HEPG2)などを用いた添加培養実験を行い、急性反応タンパク質の遺伝子発現率(qRT/PCR)などで確認する。
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Causes of Carryover |
初年度は、CART症例の例数が少なく、炎症性サイトカインの分析費用が当初より少なかった。また、還元型アルブミン分析用の蛍光検出器が予定を下回る費用で購入できたため申請時よりも使用額が少なかった。次年度はサイトカイン測定および細胞培養系とqRT/PCRに多くの費用を使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒト肝癌細胞HEPG2と培養ステムを購入し細胞を増殖させ、CARTの際に使用しない患者腹水を添加し、急性相反応蛋白質の遺伝子発現を定量RT/PCRで分析し再生処理の有用性を検証する。また、CART検体の炎症性サイトカインの測定に当該研究費を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)