2017 Fiscal Year Research-status Report
軽度認知障害者および早期アルツハイマー病患者の生活関連動作障害メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K01483
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
小田桐 匡 京都橘大学, 健康科学部, 専任講師 (30388904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麻生 俊彦 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (50397543)
上田 敬太 京都大学, 医学研究科, 助教 (60573079)
葛谷 聡 京都大学, 医学研究科, 講師 (30422950)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生活関連動作 / 手段的日常生活動作 / 眼球運動 / 軽度認知障害 / 早期アルツハイマー病 / 生活機能障害 / 障害メカニズム / 失行 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知機能障害の影響により生活機能がどのように変化するか,その障害の認知的メカニズムを解明するため,軽度認知障害者,早期アルツハイマー病患者を対象 に,生活関連動作遂行中の眼球運動計測を行い,特定の認知機能の指標となりうる一連の眼球運動指標を用いて分析を開始している.平成28年度は,遂行機能の 能動的な外界探索の指標として課題遂行中の視線移動距離を,さらに連続的な運動計画の指標として超短時間注視行動についてそれぞれ分析を行った.後者の超 短時間注視は,新規なサッカード準備に要する時間(約200ミリ秒)よりもさらに短い注視時間(100ミリ秒前後)を特徴とすることから,対象空間内での事前の 連続的で同時並列的なサッカード準備の存在を反映すると考えられているものである.これまでのところ,軽度認知障害者および早期アルツハイマー病患者計10 名,年齢,性別,教育歴を一致させた健常高齢者26名の計測が完了した.得られたデータをもとに分析したところ,本研究で用いる比較的簡易な生活関連動作課 題では,今のところ患者群の遂行能力(エラー数等)低下は認められていない.しかしながら,視線移動距離と短時間注視の割合は健常群と比べ有意に増加し た.さらに,短時間注視率は遂行機能の神経心理検査成績と正の相関を示し,記憶検査(論理記憶課題)成績とは負の相関を示した.したがって,患者群は見か け上は健常高齢者と相違なくても,より遂行機能を発揮しながら課題を遂行していたことになる.本連動作中のこれら眼球運動指標の増加は,認知機能障害の初 期段階に観察される遂行機能のある促進状態を反映しているのかもしれない.すなわち,生活関連動作を達成するため,患者群の遂行機能は課題遂行に影響する 認知機能(記憶)低下を代償すべく促進されたと思われる.その結果,健常群以上に作業空間内での過剰かつ連続した視空間的注意を発揮したと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている主たる問題は,対象患者のリクルートである.分担研究者として昨年度新規に加わった医師は引き継ぎを終えて間もないため,この点は致し方な いと考えている.現在は,診療上定期的な神経心理検査の実施が必要であり,そのタイミングを見越して患者に研究協力を要請するなど,患者や家族の負担を軽 減しながら患者リクルートが実現するよう,工夫を凝らしながら実践いただいている.今年度はさらに患者リクルートがすすむと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究進行によって,上記した超短時間注視の詳細なメカニズムの検討が新たに必要となった.そこで,今年度は本注視行動の神経基盤を詳細に分析でき るように,分担研究者と検討を進めていく予定である. 研究遂行の一つの懸案事項であった,データ分析(視線データの定性分析)の速やかな進行の問題は,当初複数学生の雇用によって推進してきたが,研究代表者 の本務の都合や,学生との時間調整上の問題など,種々の障壁が生じ,予想以上に時間がかかることが判明した.そこで,定性分析を外部業者に委託することに なった.詳細なマニュアル作成と,複数名による定性分析後の一致率の算出により,客観性を維持しつつ早急に分析が行えるようになった.そのため,今年度半 ば頃には今ある全ての対象者の視線データの定性分析が完了する予定である.今後の対象者の視線データの分析については,民間研究助成も申請し,研究費の不 足分を補いながら進めていく予定である. 映像データが大量に保存された結果,パソコンのハードディスク(外部接続)容量が限界に達した.これについても,民間研究助成等で補いながら,データの バックアップシステムを合わせて構築していきたい.
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Causes of Carryover |
眼球運動データの定性分析を当初は勤務先の学生を雇用し実施していたが,進捗状況が思わしくないため途中で中断した.その結果,学生雇用に予定していた金 額が大幅に余った.また,患者群のリクルートが十分進まず,謝金額の減少となったことも影響していると思われる.これは昨年度始め頃から,患者リクルート を担当する分担研究者の勤務先の移動が起こり,それに伴い,分担研究者の変更が影響している.新たに加わった医師は昨年度の半ば頃から本格的に研究に参加 したため,リクルートがまだ十分成功していない状況である.
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Research Products
(3 results)