2018 Fiscal Year Research-status Report
軽度認知障害者および早期アルツハイマー病患者の生活関連動作障害メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K01483
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
小田桐 匡 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (30388904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麻生 俊彦 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (50397543)
上田 敬太 京都大学, 医学研究科, 助教 (60573079)
葛谷 聡 京都大学, 医学研究科, 講師 (30422950)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 軽度認知障害 / IADL / 障害メカニズム / 行動分析 / エラー / マイクロスリップ / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】手段的日常生活動作(Instrumental Activity of Daily Living:IADL)の障害は認知機能障害の影響を受けやすく,患者や家族のQOLに深刻な影響を与えるため,本障害のメカニズムを発症早期から明らかにし介入方法の確立に貢献することが必要である. 【目的】今年度は軽度認知障害者(MCI)を対象にIADL動作の行動分析を実施した. 【対象】京都大学医学部附属病院のもの忘れ外来に通院するMCI者8名,早期アルツハイマー病患者(AD)4名,健常高齢者26名. 【方法】机上で実施可能なIADL動作課題(4種類)を各3試行実施し,ハンディカムで記録した映像をもとに分析を行った.まず一連の課題遂行過程を,使用する道具の空間移動や状態変化を基礎単位として細分化し,これを行為の最小単位(細目行為)として定義した.各々の細目行為を行動分析の対象とし,各細目行為上に生じるエラーやマイクロスリップの回数を統計データとした.エラーとは細目行為の欠損や順序間違い,細目行為時に使用する道具の間違いや操作の失敗に相当する.マイクロスリップとは,エラーには至らないが,各細目行為時に認められる動作の逸脱に相当し,道具の到達運動時の手の軌跡変化,道具の把持部位や把持様式の変更,道具操作の一時的中断などがこれに該当する.ノンパラメトリック検定にて両データの群間主効果を検討した. 【結果と考察】群間主効果はエラー数のみで認められ(H=11.4,p<.01),MCI群,AD群ともに健常群よりも有意に多かった.マイクロスリップ数では差は認められなかった(H=2.2,p=0.34).マイクロスリップは到達把持運動場面で,エラーは道具使用場面で生じるという特徴から,ともにIADL遂行時に観察される正常動作からの逸脱現象であるが,異なる神経基盤とその障害程度の違いを反映していることが予想される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
軽度認知障害者ならびに早期アルツハイマー病患者の対象者数が依然として少ない現状である. しかしながら,大量の映像データ分析の体制がようやく確立し,今年度の詳細な行動分析が実現した.この点は研究焦点の一つである眼球運動の分析上も重要である.すでに半分以上の眼球運動データの解析が終了し,2019年度からの基盤研究(C)と一体に眼球運動分析を完了させたい.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの対象者データの分析に基づくものではあるが,我々の予想したとおり,軽度認知障害者においても一見自立するIADL上でさえ,微細障害が進行していることが判明した.ただしその障害は,通常の臨床で行うような1,2回程度の行動検査では捉えられない微細なものである.我々は肉眼では捉えられない微細障害を眼球運動の分析を通して明らかにすることを目的としていたが,まさにその重要性が明らかになったといえる.今後は,これまでに報告してきた眼球運動指標に加え,さらに別の眼球運動指標も含め,本障害の特徴を多角的に明らかにすると同時に,各眼球運動指標の神経基盤や心理学的基盤の解明によって,本障害の認知,行動,生物学的解明を進めていきたい. ただしそれらを大きく進める上で課題となっているのが患者リクルートの成功である. 幸い,2019年度の基盤研究(C)の採択によって,本研究を継続することが可能となった.患者リクルート体制の強化を実現出来れば,本研究は大きく進展することが見込まれる.適時研究者会議を開催し,問題解決をはかりたい.
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Causes of Carryover |
データの分析の遅れが影響し,論文投稿が2018年度内に完了しなかった.現在海外誌に投稿すべく論文作成を行っており,その関係から次年度使用のための申請を行った.また,分析を終えていないデータも残っているが,2019年度の基盤研究(C)の採択によって,その解析費用を一部賄うことが可能となった. したがって,次年度使用分は主に海外誌に投稿するための論文作成関連費用と,データ分析に関わる費用に相当する.
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