2016 Fiscal Year Research-status Report
音の方向感認知能力の評価方法構築に関する基礎的研究
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16K01501
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
砂原 伸行 金沢大学, 保健学系, 准教授 (30624613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能登谷 晶子 京都学園大学, 健康医療学部, 教授 (30262570)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 聴覚刺激 / 音像定位 / 眼球運動 / 視線走査 / 音の方向感認知 / 高齢者 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高齢者及び脳損傷者の音の方向感認知能力の実空間での評価方法について,その方法を確立することが目的である.具体的には実空間での評価が可能なスピーカ法による評価環境を構築し,聴覚刺激に加えて視覚刺激も呈示することで,音の方向感認知能力と視覚機能との関連が明らかとなる課題を実施する.視覚機能については眼球運動測定システムを用いて検討する. 実験設定としてはスピーカ配置による音刺激システムを構築し,音の方向がどの程度正確に認識可能かを検討する.この検討の過程において眼球運動測定機器を使用し,音の方向認識の際に実際にその方向へ注意が配分されているのかを,眼球運動測定機器による視線走査のパターン分析から明らかにする.本研究で得られた結果については,健常人を検討することにより,音の方向感認知能力と視線走査パターンとの関係が加齢に基づきどのように変化するかが理解される.また脳損傷例では音の方向感認知能力が低下するとされている半側空間無視例の症状の理解,及び聴覚刺激を用いた介入に役立つと考えている. 研究初年度の本年度においては,現在までのヘッドフォン法による実験の成果をまとめつつ,その知見から実際のスピーカ法による実験機器の整備,眼球運動測定機器の設置方法及びデータ収集方法についての検討を行った.その成果についてはヘッドフォン法による知見を中心に神経心理学会ワークショップにて講演し,さらに論文を1編発表した. 実験機器に関しては眼球運動測定機器を導入し,若年健常者を対象として,操作練習及び予備的検討を兼ねて,音刺激システムとどのように関連付けて視線走査パターンを測定すれば適切かの検討を行った.検討ではスピーカ配置状況の検討と視線での対象物の認識の精度を確認した.また留意点として被験者の頭頚部の動きをどのように制御すれば良いかが今後の検討事項として明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の研究計画では実験機器の整備,眼球運動測定システムでの予備的検討を行い,音刺激システム構築のための条件について検討することが主であった.音刺激システム上のスピーカの配置間隔や視線走査での対象物認識の精度等について知見が得られ,音刺激システムの整備,完成に向けて有意義な情報が得られた. また眼球運動測定の際に被験者の頭頚部の動きの制御及び迅速な機器の取り付け,較正の実施が臨床例への適応に向けて課題となった. 音刺激システムの導入は次年度であるが,本年度は実験準備段階であり,主となる実験機器である眼球運動測定装置については手配が完了した.これを用いて予備的検討を実施したことで機器操作,実験条件設定等について,次年度以降の本実験に向けての情報が得られた.今後の課題も幾つか指摘されるに至ったが,概ね順調に本研究が進行しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討ではスピーカ配置に関して眼球運動測定の観点から,その配置条件について検討した.その知見に基づき次年度はまず実際の視覚探索課題を行い,その視線走査パターンを検討する.さらに開発企業との間で現在検討している音刺激システムを整備し,視覚探索課題の結果から,眼球運動測定機器と連動させて視線走査パターンを測定するのに最適なシステムを完成させる予定である. 今後若年健常者,壮年健常者,高齢健常者へと被験者の対象を広げていく予定である.また脳損傷例では音の方向感認知能力が低下するとされている半側空間無視例の症状の理解に役立つと考えている.それは半側空間無視例の聴覚面の無視を評価する方法の確立に繋がることが第一に挙げられる.さらに音刺激システムによる聴覚刺激がどのように視線走査パターンを変化させ,空間的注意の促しに役立つか否かも本研究において検討可能であると考えられる.最終的には臨床例に多く適応させることにより,それらの知見から音刺激を用いた有効なリハビリテーションプログラムの立案に寄与することも可能となると考えている.また高齢者の公共空間における音環境整備においても,有用な情報を得られると考えている.
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Causes of Carryover |
本年度の当初の予定としては実験機器の整備として,眼球運動測定システムをまず導入することであった.そして音刺激システム構築のための予備的検討を行った上で,眼球運動測定システムに音刺激システムを加えた実験状況の詳細な検討を本年度末までに行うことを予定していた.したがって音刺激システムに関しては本年度内に予算を計上していたが,開発企業との間のシステム詳細の決定に時間がかかり,その決定が年度内終盤となった結果経費の使用には至らなかった.また眼球運動測定システムを使用する際の被験者の頭頚部の固定装置についても,その必要性と形状についての検討を予備実験の中で行うこととなり,様々な実験状況に合致する装置の決定に若干時間がかかった.その結果こちらの方にも経費が本年度内には使用されなかった.以上の理由により,当初の予算よりも多い使用額が次年度に生じたことになる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は音刺激システムの整備を行い,経費を使用していく予定である.また眼球運動測定システムと連動して計画したシステムが駆動するための制御プログラム,さらに被験者の実験状況を一定にするための頭頚部固定装置などにも経費を使用する予定である.以上より本実験に着手出来ることが期待されるので,実験参加被験者の謝金が必要となって来る.次年度はこれについても経費が使用されることになる.
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