2017 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ・ツーリズムの地域的展開に関する実証的研究
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16K01692
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
前田 和司 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30229299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 周祐 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (00634221) [Withdrawn]
松村 和則 筑波大学, 体育系(名誉教授), 名誉教授 (70149904)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スポーツ・ツーリズム / アウトドア・スポーツ / 林業 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる平成29年度は、前年度における現地の生活文化調査に加え、アウトドア・スポーツの実施可能性について専門家と合同調査を実施し、また現地の関連する組織、団体との関係構築を進めた。 アウトドア・スポーツの実施可能性については、南会津町における河川での釣りの現状を地元漁協への聞き取りによって明らかにするとともに、カヌーによる川下りの可否について実地調査を行った。また、貯水池およびその周辺でのアウトドア・スポーツの可能性について実地調査を行い、外来種であるブラックバスの繁殖と落ち葉によるヘドロの堆積を確認し、今後事業を進めていくうえで、環境修復の必要性があると判断した。また森林については、森遊びが可能な民有林について所有者に利用の内諾を得た。さらに針生区の共有林での四季を通じた利用について現地調査を実施した。その利用については、権利者の確定が難航しており、保留のままである。そして、町内のスキー場等を視察し、新たなプログラム開発の余地があることと、周辺でのバックカントリーツアーの実施可能性も確認した。 現在、南会津町では林業を新たな地元産業として育成する事業が林野庁の助成を受けて推進されており、この計画策定メンバーに加わり、林業とアウトドア・スポーツの直接的、間接的かかわりの可能性について検討をはじめている。 さらに、アウトドア・スポーツ専門家の南会津町移住を実現した。これについては、これまでの調査で築いた各種団体、組織との関係を通じてサポートした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の調査研究の進捗状況は順調に進展しているが、その大きな理由は、共同研究者の松村和則氏の30年間にわたる南会津町での林業支援、地域支援の取り組みという基盤があったためである。言葉を換えれば、この30年間での山村および山村をめぐる状況の変化、特に過疎化、少子高齢化、限界集落化という流れが、地元地域住民の危機意識を高め、本研究への前向きな協力姿勢がととのってきているためであると考える。 南会津町、とりわけ針生区は、もともと青少年旅行村やスキー場開発、別荘地開発などによって、観光客を長年にわたって受け入れてきた地域である。そのため、外部から訪れる人々にたいして閉鎖的ではないことも幸いした。 また、町内林業関係団体が林野庁の助成を受けて協議会を発足させ、新たな林産物の開発や森林利用のあり方について模索し始めていることも大きかった。研究代表者および共同研究者も、この事業の森林利用部会のメンバーに加わり、本研究の構想をフィードバックすることが可能となっている。 さらに、南会津町でのアウトドア・スポーツの可能性を探る調査に協力してくれた北海道在住の専門家が、林業とアウトドア・スポーツを組み合わせた仕事を志向して移住を決めたことも、この調査研究にはずみをつけることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成30年度は、この2年間で明らかにしてきた、南会津町におけるアウトドア・スポーツ・ツーリズムの可能性を現実のものにさせることが課題となる。しかも、ここまでの調査研究で見えてきたのは、林業をはじめとする地元産業と複合的な観光開発を目指さなければ、地域の生活課題にこたえることができないということである。したがって、地元団体、組織および移住し、地元森林組合に就職したアウトドア・スポーツ専門家と密接に連携しつつ、まずは事業を起こすことを目指す。 具体的には、林産物を利用したアウトドア・スポーツ・ツーリズムであり、伐採期を迎えている地元の杉を利用したカナディアンカヌー製作や、広葉樹を利用した雪板製作を計画している。木の伐採、製材、加工、そして製作したカヌーや雪板を地元の貯水池やスキー場などで使ってみるという一連の過程そのものをアトラクションにする。そこには森林所有者、製材所、建具店などとの連携、および作業場、機材の確保が必要となってくる。 そのほかにも、四季を通じたアウトドア・スポーツを観光客に試験的に提供する試みも積み上げていく。また、冬季のスキー場集客の新たなプログラムの開発と実用試験も実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、第一に物品費が計画よりもかなり使用しなかったためである。これは初年度の平成28年度に購入したもので間に合っているためである。これについては、平成30年度に報告書の刊行を計画しており、そちらに充当するとともに、アウトドア・スポーツ・ツーリズムの試験的事業に必要な物品に充てる予定である。また、人件費・謝金の支出も少なくなっているが、これは専門家が現地調査の日程を多くとれなかったことによる。最終年度に専門家によるさらなる調査を実施する。
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