2016 Fiscal Year Research-status Report
運動器検診のための腰椎分離症の簡易的な検出システムの開発
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16K01771
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
渡邊 裕之 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40348602)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腰椎分離症 / 腰痛 / 伝導音検査法 / 成長期 / 予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は腰椎分離症の簡易的な検出システムの開発である。腰椎分離症は男子では14歳ころに多く発症する腰椎関節突起間部の疲労骨折である。腰椎分離症はスポーツを受傷機転とし、多くの症例の自覚症状はスポーツ活動中のハイパフォーマンスの一瞬に限定されるため、医療機関を受診することは少ない。このため、医療機関を訪れた際には進行期や終末期に到達していることが多い。腰椎分離症は初期であれば保存療法により骨癒合が期待できるが、進行期以降は癒合の確率が低減する。癒合の得られなかった症例はリハビリテーション等の保存療法で軽快するものの、将来的に腰痛発症のリスクが高くなることが考えられる。そこで、平成18年4月より全国の小学校で運動器検診が開始されたことを鑑み、運動器検診において実施可能な簡便な腰椎分離症の検出システムが必要であると考えられた。 当該年度の研究成果は、当初の腰椎棘突起への骨叩打に高密度ポリエチレンハンマーを用いていたが、侵害刺激を低くするとともに再現性のある骨叩打刺激を与えられることを基準にアクティベーター機器(アクティベーターinstrument社)を用いることとした。アクティベータ機器は全長18cm、全幅7cm、重量100g程度のハンディタイプの骨への振動刺激装置である。携帯性に優れ、使用に際して場所を選ばない利便性がある。また、最大の特徴は叩打の強度が4段階に変更することが可能で、検者を変更しても再現性を持って叩打することが可能である。しかしながら、叩打を実施する機器を変更したことにより、骨モデルを用いた腰椎分離症モデルの判別について再度検証したところ、従来の高密度ポリエチレンハンマーによる叩打と同様の結果が得られた。したがって、今後の本研究の叩打刺激にはアクティベータ機器を使用することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験として骨モデルを用いて作成した腰椎分離症モデルによる評価を実施している。当初予定していた実験システムは人工骨モデルによる腰椎分離症モデルを有効に判別することができた。 本研究では生体を対象とするため、骨に付着する軟部組織等の影響を受けることが考えられ、研究の実施とともに判別能力の検証と信号解析プログラムの改善を行う必要がある。実際に予備実験において、腰椎椎弓や上下関節突起間部に完全分離の認められない腰椎分離症では効果的な検出結果には至らなかった。そこでハンマーによる骨叩打では安定した刺激を骨に与えることが困難であるため、骨叩打刺激を与えるための機器を再度選定した。機器は複数選定されたが、極力侵害刺激を低くすることと再現性のある骨叩打刺激を与えられることを基準にアクティベータ機器(アクティベータinstrument社)を用いることとした。 骨叩打を行う機器を更新したことにより、生体に適応する前に再度骨モデルによる検出能力の確認を行った。骨モデルは腰椎上下関節突起間部を不完全に分離した分離症モデル、完全に分離したモデルそして分離のない正常モデルの3種類を準備した。骨モデルによる検出結果はハンマーを用いた研究と同様に腰椎分離症モデルを検出することが可能であった。また、アクティベータ機器を用いたことにより、検者が変更されても使用方法のトレーニングを介さずに安定した骨叩打刺激を加えることが可能となった。また、本研究は本学研究倫理委員会の審査を通過済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は骨叩打を加える機器としてアクティベータ機器を改めて採用したため、骨モデルによる検証を再度確認する。同時に得られた振動信号を解析するためのプログラムについても検出能力の改善を実施する。予備実験として実施した高密度ポリエチレンハンマーによる検出では、骨モデルの腰椎椎弓や上下関節突起間部の切離により振動信号の周波数帯域が100Hz以下の低周波相へ減衰した。アクティベータ機器においても同様に低周波相への変化が認められるが、入力される振動信号の性質が異なる可能性があるため、再度波形特性を考慮してプログラムの改変を実施する。昨年度は従来使用していた信号処理ソフト(Matlab ver7)を最新の版(Matlab 2016b)に更新し、新たに信号処理のためのプログラムを作成した。また、従来使用していた高速フーリエ変換による周波数解析に加えて、ウェーブレット解析を加える予定である。解析プログラムの改変により、骨叩打によって得られた振動信号に含まれる骨傷の情報抽出を積極的に進める予定である。 現在予定されている対象者は某サッカークラブチームに所属する成長期サッカー選手である。対象者の人数は約150名であり、当初予定している50名のデータを得るためには十分な数を確保している。また、昨年度実施されたメディカルチェックの対象者では、MRI上に骨皮質下の骨傷の観察された対象者は77名中21名であり、全体の27%に達している。したがって、腰椎分離症の判別を実施するためには適切な対象者群である。
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Causes of Carryover |
昨年度の研究においては高密度ポリエチレンハンマーを使用した際の検出能力と安全性の検証を実施する予定であった。骨叩打する機器を変更したため、再度検出能力の検証を実施し、安全性の検証が次年度へ繰り越されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は早急に安全性の確認をおこなう。アクティベータ機器が医療機器であるため、すでに使用に関しては安全性が保証されているが再度検証を実施する。その後、速やかに生体を対象とした実験へと移行する予定である。
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