2017 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムマイニングに基づく新規ラッソペプチドの単離と構造決定
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16K01913
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 真也 静岡大学, 農学部, 准教授 (20510621)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラッソペプチド / ゲノムマイニング / 放線菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラッソペプチドとは、その構造的特徴から命名された抗菌ペプチドのグループの名称である。現在までに数々のラッソペプチドがαプロテオバクテリア、大腸菌および放線菌から単離・構造決定されている。構造の特徴は、20-30残基のアミノ酸からなるペプチドにおいてN末端のアミノ基が、N末から9-10残基目に存在するアスパラギン酸もしくはグルタミン酸の側鎖のカルボキシル基とペプチド結合を形成し、“輪”を形成する。さらにC末端の直鎖部分が輪の中を貫通するという特異な立体構造を有しており、その構造が“投げ輪”に似ているためラッソペプチドと呼ばれている。その生合成は非常にシンプルであり、大腸菌の代表的ラッソペプチドmicrocin J25の場合、構造遺伝子mcjA、修飾酵素mcjBおよびC、トランスポーターmcjDとわずか4つの遺伝子で生産されることが明らかとなっており、ゲノム情報から生合成遺伝子の予測が容易である。そこでデータベースのバクテリアのゲノム情報からゲノムマイニングを行い、新規ラッソペプチド生合成遺伝子の探索を行い、候補となる菌を選抜した。その情報を元に各菌の培養を行い、Sphingomonas subterraneaからsubterisin、Streptomyces cattleyaからcattlecin、Planomonospora sphaericaからsphaericin、Actinokineospora spheciospongiaeからactinokineosinを単離し、構造決定に成功した。また、subterisinおよびsphaericinに関しては、NMR実験においてNOE (Nuclear Overhauser Effect) 測定によって得られる情報およびプロトン間のカップリングコンスタントを元に、三次元立体化学の決定を行うことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
入手した菌株のラッソペプチド生産性が高く、高収率でラッソペプチドを得る方法を構築できた。それぞれの株を大量培養し、有機溶媒で抽出し各種クロマトグラフィーで分離後、HPLCで精製を行った。得られたラッソペプチドに関して、ESI-MSおよびNMRを用いた構造解析を行った。NMR実験においてNOE (Nuclear Overhauser Effect) 測定によって得られる情報、プロトン間のカップリングコンスタントを元に、sphaericinの三次元立体化学の決定を行うことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、さらに新規ラッソペプチドの生産を確認している菌株が複数種ある。Streptomyces specialis JCM 16611株およびStreptomyces lavenduligriseus NBRC 13405株に顕著なラッソペプチドの生産が見られた。これらの株を主にISP2寒天培地を用いて培養を行う。さらに、培養菌体を有機溶媒で抽出を行う。抽出物を各種クロマトグラフィーに付し、最終的に純粋なラッソペプチドを単離する予定である。構造決定に関しては、NMRおよびMSを用いて解析を行う。NMRのNOE実験から得られたデータを元に三次元立体構造の解析を行う。各ラッソペプチドに関して抗菌活性試験等の生理活性試験を行い、活性を明らかにする。最終的に構造決定および活性評価が終了次第、論文として発表する予定である。
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Research Products
(10 results)