2017 Fiscal Year Research-status Report
カンボジアにおける精神科診断分類の背景についての研究
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16K01975
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
丸谷 俊之 東京工業大学, 保健管理センター, 准教授 (20642177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 彰泰 岐阜大学, 保健管理センター, 准教授 (90402172)
布施 泰子 茨城大学, 保健管理センター, 准教授 (60647725)
野崎 章子 千葉大学, 看護学研究科, 講師 (90361419)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文化精神医学 / 社会精神医学 / 地域研究(カンボジア) |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,まず調査のための評価尺度について,カンボジアでも適用可能な尺度を選定した。既にカンボジア語版のあるSF-12, CD-RISC10を用いることとし,統合失調症患者と家族のQOL(quality of life, 生活の質)を調べる尺度のS-QOLとS-CGQOLと,統合失調症症状評価尺度PANSSの短縮版PANSS-8について,カンボジア語版を作成することとした。 また,国際的な評価尺度では拾うことのできない病気の受け止め方などを調べるため,質的分析用の質問項目をまず日本語で考案し,英語版を作成後に,カンボジア語版を作成した。 本研究の意義としては,そもそもカンボジアで統合失調症の患者および家族のQOLを調べた研究がなく,本調査によって,今後の支援に有用な知見が得られることが第一に挙げられる。また,質的研究を組み合わせることで,国際標準の評価尺度だけではわからない病気,治療,生活の変化に対する受け止め方を調べ,特に海外からの支援関係者に対して,文化的差異に配慮した支援が行えるような資料を提供し得ることである。 カンボジア国内の政治情勢は不安定であったが,現地での調査実施に特段の影響はなかった。また,シェムリアップのSUMH Cambodiaのディレクターは死去したが,その後任の体制が平成29年5月に固まり,予定通りプノンペン,シェムリアップで上記の評価尺度および質問紙を用いたインタビュー調査を実施することができた。なお,プノンペンでは十分な被験者を得られず,インタビューの一部はコンポンチャムにあるTPO Cambodiaの精神科外来で実施した。最終的に患者61名,家族61名にインタビューを行った。 それらのローデータを集計し,音声データについては,TPO Cambodia研究評価部門の協力を得て,テープ起こしおよび英語への翻訳を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地の政治情勢が本調査の実施には特段の影響はない程度には保たれていたこと,シェムリアップのSUMH Cambodiaのディレクターは死去したが,その後任の体制が平成29年5月に固まったことから,インタビュー調査は実施および終了することができた。 ただし,データ解析については,まだ量的分析の解析に着手したばかりで,音声データはまだテープ起こしと英語への翻訳の作業中である。そのため,当初予定よりはやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
量的分析のデータ解析を進める。また,6月末までにはすべての音声データのテープ起こしおよび英語への翻訳が終了する予定であり,質的研究についても分析を進める。 前者については,SPSS Statistics BaseおよびSPSS AMOSを用いる。後者についてはNvivo11 plusおよびKHcorderを用い,共同研究者とディスカッションを行いながら進める。さらに,量的分析と質的分析を組み合わせた解析も行う。また,このインタビュー回答の背景事情について,可能であればプノンペン,シェムリアップを再訪し,現地カウンターパートのスタッフとディスカッションを行うことも検討している。
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Causes of Carryover |
インタビューのテープ起こしと翻訳に当初計画よりも費用が生じることから,予算の前倒し請求をしたが,平成29年度内にはすべての作業が終了しなかったため,次年度への繰越が生じた。残りについては6月末までには完了する予定で,それを待って追加の支払いを行うことになる。また,できればTPO Cambodiaの研究評価部門を再訪し,直接ディスカッションをする機会を持ちたいのと,成果について10月のPRCP 2018(環太平洋精神科医会議,ミャンマー)で発表するため,旅費が必要となる。成果について論文化も進めるため,英文校正費用と雑誌の投稿費用も必要となる。
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