2016 Fiscal Year Research-status Report
熱帯泥炭湿地林の人為的攪乱による森林機能・生態系サービスの変化と地域社会への影響
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16K01982
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩寺 さとみ 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 研究員 (60621117)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱帯泥炭湿地林 / 熱帯ヒース林 / 生物多様性 / 生態系機能 / 環境要因 / 人為的撹乱 / 泥炭火災 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシアのスマトラ島リアウ州、中部・ 西カリマンタン州およびブルネイの各熱帯泥炭湿地林において、文献をもとにこれまで行われた森林調査のデータ収集を行った。近年の泥炭湿地林の人為的攪乱のおもな原因は泥炭火災である。火災後にはその強度や環境要因を反映した様々な植生が発達すると考えられる。そこで、泥炭湿地林の回復可能性を明らかにするするために、スマトラ島リアウ州の泥炭火災跡地において、火災後に発達する草原植生とその分布を決定する要因を明らかにするための調査を行った。その結果、泥炭火災後に発達する草原植生が地下水位とその水質によって明確に規定されることが判明し、地上部の植生が泥炭火災跡地の環境の明確な指標となることが示唆された。さらに、この結果を中部カリマンタン州で行われた同様の研究と比較することによって、泥炭火災跡地における草原植生の分布を広域に理解するためのモデルを構築中である。今後は草原植生の後に発達する二次林についても調査を行う予定である。 ブルネイは東南アジア域で最も自然に近い熱帯泥炭湿地林が残されている場所である。このブルネイで新たに調査を始めるべく、現地カウンターパートと綿密な議論を行い、来年度以降の調査に向けての準備を行った。これにより、ブルネイの泥炭湿地林の種組成、および森林動態に関する研究、また、樹木の展葉フェノロジーの調査とリタートラップ法を用いた森林の季節的変化に関する研究を行う準備を進めることができた。 国際学会で複数回の発表を行うとともに、インドネシア、マレーシア、ブルネイの熱帯泥炭湿地林の環境問題に関する文献研究を行い、これに関する論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシアの各森林において、順調に過去のデータ、および現在のデータの収集を行うことができた。当初の計画では今年度にすべての観測機器の設置を行う予定であったが、新たな機器の導入を決定したため設置が遅れてしまった。これについては来年度に設置する予定である。また、インドネシア、マレーシア、ブルネイの熱帯泥炭湿地林の環境問題に関する文献研究を行うことによって、各国における熱帯泥炭湿地林の現状とそれぞれの政策の違いについての理解が深まった。今後、熱帯泥炭湿地林の人為的撹乱が生態系機能や生態系サービスの変化を通して地域に与える影響を考えていく上で役立てていけるだろう。新たに調査地として設定したブルネイについても、来年度からの調査に向けての準備が整った。このため、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の計画通りである。加えて、インドネシア中部カリマンタン州の熱帯泥炭湿地林~熱帯ヒース林にトランセクトを設置して森林調査を行い、土壌条件の連続的な変化によって森林の種組成、群集構造、それぞれに生育する樹木種の葉や材などの特性がどのように変化するのかについての研究を行う。ブルネイについては、現在、新たに森林内のフラックスタワーに設置する展葉フェノロジーの観測機器を開発中であり、来年度に設置の予定である。同時にリタートラップ法による調査を開始する。
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Causes of Carryover |
今年度は長期間シンガポールに滞在しており、そこを拠点として現地調査を行ったために旅費を節約することができた。また、設置予定の観測機器が現在開発中であるため、購入を来年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分と合わせて引き続き海外現地調査の旅費として使用する予定である。観測機器については来年度購入を行う。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] Tropical peatlands and their environmental issues2016
Author(s)
Satomi Shiodera
Organizer
International Workshop on ‘The Japan-ASEAN Collaborative Research Program on “Innovative Humanosphere in Southeast Asia: In Search of Wisdom toward Compatibility Growth and Community in the World”
Place of Presentation
京都大学(京都)
Year and Date
2016-12-16
Int'l Joint Research / Invited
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