2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02078
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
庄子 真岐 石巻専修大学, 人間学部, 准教授 (40587903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮原 育子 宮城学院女子大学, 現代ビジネス学部, 教授 (80295401)
内山 清 青森中央学院大学, 経営法学部, 教授 (00326646)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 観光振興 / 観光復興 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、被災地域における観光復興の明暗を分けている理由を明らかにし、震災に強い観光振興のあり方を理論的に提示することである。庄子・内山は、被災地の観光復興のあり方としてモデルとなる事例を人口などの地域規模や、震災前の観光入込数などの観光の規模の違いに着眼し、その抽出を試みた。被災各県の市町村における震災発生前年から現在までの一般統計データおよび観光統計を収集し、分析を行い、被害状況および観光入込数の時系列的変化のパターンを把握し、地域の類型化を行った。分析の結果、観光入込数が大きい(以下、観光規模が大きい)または人口に対する観光入込数が大きい地域(以下、観光インパクトが高い地域)、被害の程度を考慮した上で観光復興の程度の違いを客観的に示すことができた。 次に、観光規模または観光インパクトが大きく、被害の程度も大きいものの、観光復興の程度が早い地域を取り上げ、震災発生前から現在までの観光復興に関する取組みについて、観光振興にかかわる関係者へのヒアリング調査や、二次資料などから情報収集を行った。宮原は、5月に仙台で開催された広告関連の全国大会にパネリストとして参加し、被災地の生活再建が進む中、宿泊観光などの伸び悩みや観光振興の方向性について報告した。全国の広告や報道関係者との懇談から、メディアにおいても既に東北の震災への関心が薄れていることがうかがえ、東北側からの積極的な発信の継続の必要性を痛感した。こうした中でも、被災地の現場では、2016年度中に復興商店街から本設の商店街のオープンや、震災遺構の見学路の整備などが進められてきており、これらの施設整備の効果については、来年度以降に検証が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
被災地を対象とした調査を通じて本研究グループメンバーは、被災地域間における観光復興の程度の違いを感じてきたものの、それを客観的に検証できていなかった。そのため、本年度取り組んだのは、被災地域間の観光復興の程度の違いを客観的に示すことであった。まずは、時系列的分析が可能になるよう一般統計データ、観光統計データなどを活用し、客観的な指標を構築した。次に、構築したこれらの指標に基づき、被災地市町村を分析し、被災地の観光復興のあり方としてモデルとなる事例を抽出した。さらに、モデル事例として抽出した地域における震災前からの取組みについての情報収集を行い、これまで研究グループで立てた被災地域における観光復興に関する仮説の検証を行っている。その中でも、本年度は主に、宮城県内の被災地での観光復興の動きを取材した。仙台市では、震災復興記録誌の編纂作業の担当者に仙台沿岸部の被災地の観光整備についてヒアリングと資料収集を行った。石巻圏域では、観光整備の状況を宮城県東部地方振興事務所主催のモニターツアーに参加して、行政側が提供したい観光資源と、来訪者が楽しみたい観光資源が一致するかなど現地で意見交換を行った。また、震災後創出された「震災からの学び」を観光コンテンツとして提供している組織や団体へのヒアリング調査を行い、震災後から現在までのニーズの変化とその変化への対応や課題を把握した。南三陸町においては、グリーン・ツーリズムや民泊の可能性について宮城県農村振興課や南三陸町観光協会、グリーン・ツーリズム関係者からヒアリングと意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、震災前からの現在までの観光振興の取組として、抽出されたモデル事例の地域と観光復興の程度が遅れている地域の比較検証を柱とする。後者の地域については、前者の地域と観光規模、観光インパクト、被害の程度などの地域特性が似た地域を抽出し、フィールド調査、インタビュー調査を中心に検討を進めていく。調査結果によって必要が認められる場合には、東日本大震災のみならず過去の震災から観光復興を遂げた地域をも事例として取り上げ、フィールド調査、インタビュー調査を実施していく。 また、2016年度からは、国、県が中心となって、政策や補助金の整備などを進め、被災地への観光復興を加速化しようとしている。調査を進めるにあたり、新幹線の函館延伸やオリンピックの開催など、東北外の社会環境の変化も考慮に入れる必要が出ているので、それらをふまえつつ、被災地での観光の変化をトレースして行きたい。 本年度も引き続き、宮城県内を中心に観光整備の全体像を明らかにしつつ、その効果についても関係者にヒアリング等を行いながら確認を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が少し遅れており、予定していた対象地域の一部において、フィールド調査、関係各者へのインタビュー調査が実施できなかったため。また、研究代表者が体調を崩してしまい、研究成果の発表を予定していた学会への参加がかなわなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、調査対象地域を拡大し、関係各者へのインタビュー調査、フィールド調査を中心に研究を進めていくため、旅費を中心に使用予定である。内訳は、物品費:30万円、旅費:120万円、人件費・謝金:30万円である。
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