2017 Fiscal Year Research-status Report
海岸観光地の地震津波発生時における対観光者リスクマネジメントに関する研究
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16K02080
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
海津 ゆりえ 文教大学, 国際学部, 教授 (20453441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 佳子 (押田佳子) 日本大学, 理工学部, 准教授 (10465271)
田中 伸彦 東海大学, 観光学部, 教授 (70353761)
川合 康央 文教大学, 情報学部, 准教授 (80348200)
一ノ瀬 友博 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (90316042)
九里 徳泰 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (90338658)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 観光防災 / 津波 / 避難シミュレーション / 相模湾 / ハザードマップ / 地域防災計画 / 連携 / 自治体 |
Outline of Annual Research Achievements |
相模湾沿岸自治体防災担当・観光担当それぞれに対するヒアリング調査のとりまとめを行い、一覧表に整理した。その延長となる第2ステップとして、沿岸域における観光関連事業者および観光者の防災意識調査を行うことを計画し、今年度は実施に向けて代表者の研究機関において倫理委員会の審査を受け、体制を整えた。これを受けて対事業者調査を茅ヶ崎市および平塚市において実施した。2地域の調査結果より、自治体が公表した津波浸水予測等に応じて現場での対応が異なること、場所に応じて防災対策そのものを委託しているケースがあること、予測に対して下方修正して限定的な対策を講じようとする傾向があることが明らかとなった。 本研究で対象としている6自治体のうち、最も観光者に対する影響が懸念され、また被害程度も甚大であることが予測されている鎌倉市について、津波避難予測シミュレーション(実地調査)およびゲーム理論を用いた津波避難シミュレーションデータの作成を行った。その結果、前者より津波避難ビルに人々が避難しない・できないことが予測されること、後者より高齢者や子ども、土地勘がない観光者などは逃げ遅れる確率が高いことが明らかとなった。 自治体による地域防災計画に関する先進事例調査を高知県および観光防災コンサルタントに対して行ったが、いずれの自治体も法改正への対応や限られた予算内での活動にとどまっていることが明らかとなった。「オレンジフラッグ」を開発した鎌倉市では「ミニフラッグ」を開発し、ようやく観光者に届く情報伝達手法の手がかりが得られたところであり、十分とはいえない。ハザードマップも自治体ごとに凡例の作成が任されており、国の基準はなく、隣接自治体間でも統一する機運がない。域外から訪れる観光者にとって信頼に足るツールになっているとは言えないなど、対観光者津波防災における現状での限界と課題が把握された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果である津波避難シミュレーション、ハザードマップの比較調査、地域防災計画の現状調査等の実施等は概ね研究計画通りといえる。昨年度のアチェ、ハワイに続きスリランカ、高知、台湾などの他地域調査を実施することができ、これらは計画以上の成果といえる。 初年度実施した6自治体の防災および観光担当課への悉皆ヒアリングによって把握された津波浸水予想や観光の発展度などの差異に応じて、本研究課題で想定したリスクの緊急度が異なることが明らかとなった。これにより、(1)自治体をこえて広域連携によって統一した対策・整備が求められる事項(ハザードマップの凡例等主として情報提供に関することがら)と、(2)リスクが大きい場所において先駆的に取り組み、周辺への波及効果を求めることが望ましい事項(「オレンジフラッグ」等、現場における対策に関することがら)とが存在することが想定された。今後の研究の進め方や重点をおくべき内容への示唆が得られたといえる。 本研究は2012年度にプレ研究を始めたものを引き継いでいるが、東日本大震災から年数がたつにつれて防災対策やリスク意識、緊張感などの停滞や縮退という新たな課題に気付くこととなった。 なお2017年度は事業者および観光者へのアンケートやヒアリング調査を実施する予定だったが、研究倫理の確認の時間を要したため最終年度への持ち越しとなった。だがこの間に地震発生予測情報が更新されているため、結果的には、新しい条件や情報のもとで調査を行うことができる。 他方、本研究への参加によって、各研究分担者やオブザーバーとして参加した学生が新たな研究テーマを獲得することができ、論文発表や進路、就職などに結びついている。本研究の副次的成果であり、今後この研究が引き継がれていく可能性が開かれたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2018年度は次の3つの研究を行う。 (1)観光者および沿岸域観光ステークホルダーを対象に、津波防災意識および避難意識に関するヒアリング調査・アンケート調査を行う。この調査は鎌倉市由比ガ浜、藤沢市江の島西海岸、茅ヶ崎市サザンビーチにて海開き以降に実施する。現地調査とともに津波発生時における情報伝達の対策の現状を把握する。 (2)2016年度・2017年度研究結果の精緻化、学会発表、論文化を行う。とくに津波ハザードマップに関する鎌倉市・逗子市・神奈川県の差異については問題意識の啓発から新たな対策に導くよう、提言を行う。成果を観光関係者にフィードバックすることにより、地域とともに対策を考えるフェーズに導く。津波避難シミュレーションは2017年度の成果をさらに改善し、わかりやすく操作しやすいシミュレーションに進化させる。 (3)関東大震災における鎌倉市・逗子市・神奈川県他地域における影響の再確認ととりまとめを行う。 以上をもとに相模湾沿岸における観光防災の在り方について、①事前防災、②発生時の情報伝達の在り方、③一時避難における観光者・外国人への対応の在り方について提言をとりまとめ、次年度以降の論文化を行う。
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Causes of Carryover |
2017年度に実施する予定であった対事業者調査および対観光者調査が2018年度に延期となったことによる。
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Research Products
(7 results)