2016 Fiscal Year Research-status Report
朱熹の思想体系における周敦頤の位置の再検討－『朱子語類』巻94の精読に基づいて－
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16K02160
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| Research Institution | Tokai University |
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Principal Investigator |
恩田 裕正 東海大学, 清水教養教育センター, 教授 (70307297)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 貴之 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20251499)
林 文孝 立教大学, 文学部, 教授 (60263745)
松下 道信 皇學館大学, 文学部, 准教授 (90454454)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 中国哲学 / 周敦頤 / 朱子語類 / 太極図説 / 通書 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、研究対象の一つである『朱子語類』巻94「周子之書」篇について、研究代表者等がそのかなりの部分の作成に関わり、平成27年度に完結した『汲古』に発表された訳注に主に基づき、単行本として公刊するための修訂・整理作業を進めた。公刊原稿として完成した部分はまだごく一部に止まるが、詳細な注の作成や精確な読解に必要不可欠な関連分野の調査・研究については、後述の通り一定の成果が得られている。
伊東・林等（共著）『治乱のヒストリア』及び「「仁と為す」か「仁を為す」か」論文において、林が『朱子語類』資料の取扱いに年代的差異の観点を取り入れる試みを行い、本研究に対しても重要な示唆を得ることができた。
また、『朱子語類』巻94や周敦頤の著作と同時代の道教との関わりについては、松下が特に道教の内丹道における性命説との関係を中心に作業を進め、一定の知見が得られた。
『朱子語類』の口語語彙や他巻との関係についての調査・研究においては、恩田・伊東が参加する宋明研究会での巻22の輪読、恩田による巻８の訳注作成の他、同じ研究メンバーによる平成24年度～平成26年度・基盤研究(C)「心・身体・環境をめぐる「仁」概念の再検討－『朱子語類』巻４～６を中心に」が採択されて以来、共同して進めている巻４～６の訳注作成によって、本研究遂行に必要な一定の知見が得られた。巻４についての成果の一部は、１～24条の訳注として平成29年度に発表される予定である。
このように調査・研究を進めたことによって、巻94の公刊原稿としての修訂・整理に必要な、『朱子語類』資料に対する年代的差異の観点、朱熹や周敦頤の思想と同時代の道教との関わり、いくつかの口語語彙の意味などを明らかにすることができ、朱熹による周敦頤思想の位置づけを明らかにすることに対して一定の知見を得ることができた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、朱熹の思想体系における周敦頤『太極図説』『通書』の占める位置の再検討を行うことを目的としている。この目的を達成するためには、朱熹『太極図説解』『通書解』の読解が欠かせないが、その適切な読解には、その注解を敷衍解説した朱熹の「ことば」を多く収める『朱子語類』巻94「周子之書」篇をふまえる必要がある。このため、平成28年度には『朱子語類』巻94の訳注について、『汲古』連載原稿に基づく修訂作業を進め、公刊原稿を完成させることを計画していた。そして、当初計画では、平成29年３月末までに修訂作業を終わらせて公刊原稿を完成し、平成29年度中に汲古書院から公刊する予定であった。
平成28年度には、『汲古』での連載が完結した『朱子語類』巻94の訳注に基づく修訂において、特に注釈の修訂に重点を置いて作業を進めるため、『朱子語類』他巻の口語語彙の用例研究、朱熹の他の著述及び同時代の儒学や道教の文献との比較研究などについて、研究計画での役割分担に従って研究を遂行した。その結果、巻94の訳注を修訂するために必要な一定の知見が、それぞれの研究分担部分において得られた。これによる知見は、平成24～26年度・基盤研究(C)「心・身体・環境をめぐる「仁」概念の再検討－『朱子語類』巻４～６を中心に」による成果でもある、平成29年度に発表される予定の巻４・１～24条の訳注にも反映している。ただし、平成28年度末の時点では、巻94訳注の公刊原稿としての完成にまで至った部分はまだごく一部に止まっているのが現状である。しかし、平成29年度内での巻94訳注の公刊原稿作成完了の見通しはあり、当初計画でもその公刊は平成29年度を予定していたことから、若干の遅れはあるが、研究に一定の進展があったものと認められる。
したがって、本研究の「現在までの達成度」は、「（３）やや遅れている」と判断される。
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| Strategy for Future Research Activity |
本研究が、朱熹の思想体系における周敦頤『太極図説』『通書』の占める位置の再検討を行うことを目的とすることはこれまでと同様である。同時に、周敦頤の著作に関する朱熹の「ことば」を多く収める『朱子語類』巻94「周子之書」篇の精読を行って既発表の訳注の修訂を行い、そこで得られた知見をふまえて朱熹『太極図説解』『通書解』の読解を進め、その朱熹の注解に基づいて『太極図説』『通書』の解読を行うことでそれらの詳細な訳注を作成する方法を取ることも変更しない。そして、それらの文献に用いられている口語語彙を詳細に分析することで精密な読解を行うことを前提に、『太極図説』『通書』の訳注作成にあたって、『朱子語類』巻94及び関連する他巻、朱熹の注解及びその他の著作、経書及びその注疏、道教文献などにおける記述とのネットワークを構築して注として明示することについても、当初の計画通りに研究を推進する。したがって、『朱子語類』他巻、朱熹の著作、及び同時代の儒学や道教などの思想について研究を遂行するため、関係資料・書籍の調査、収集、購入は、平成29年度以降も継続して実施する。
ただし、口語語彙の分析や、周敦頤の著作と朱熹の著述及び同時代の儒学や道教の文献との比較研究に予想以上の時間がかかっており、『朱子語類』巻94の訳注の修訂作業が遅れているので、まずはその公刊原稿としての完成を目指す。また、並行して『太極図説（解）』の訳注にも着手し、初稿を作成する予定である。
具体的には、研究代表・分担者が割り当てられた巻94の分担箇所の訳注修訂稿を平成29年９月末までに提出し、全員でその修訂稿に検討を加え、その後研究集会を開いて再修訂を行って、平成29年度内に公刊原稿を完成させる計画である。また、『太極図説（解）』の訳注については、平成30年１月末までに全員が初稿を提出し、巻94の作業と並行して修訂を進める予定である。
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| Causes of Carryover |
「次年度使用額（B-A）」が\125,517となったのは、研究成果発表のために投稿した論文２報の掲載が決定している雑誌の刊行が平成29年度となり、投稿料の支払いが同年度に繰り延べになったことと、平成29年２月に東京大で開催した研究集会に出席を予定していた松下が、病気により急遽出席を取りやめざるを得なかったことのためである。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究では、周敦頤や朱熹の著作及び両者の思想の関係の再検討を行うが、関連の先行研究について広く見直しを行うため、これに必要な中国哲学・思想などに関する図書を購入するための費用として研究費を使用することを計画している。
次に、研究に必要な原典資料については、朱子学や道教関係文献を多数所蔵する東京大・京都大・九州大などで調査を行う予定であり、また、『朱子語類』『太極図説（解）』の訳注の公刊原稿の作成にあたって、東海大などで研究集会を予定しており、こうした調査・集会を実施するための旅費に研究費を使用することを計画している。さらに、こうした調査・集会にあたってはデータや原稿の整理が必要であり、そのための資料整理用品などの購入に研究費を使用することを計画している。
最後に、『朱子語類』『太極図説（解）』の訳注を雑誌に発表する予定であるので、その論文投稿料として研究費を使用すること計画している。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] 清代考據學再考―以清代《尚書》學爲例―2016
Author(s)
伊東 貴之
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Journal Title
明末清初學術思想史再探國際學術研討會Revisiting Intellectual History of the Ming-Qing Transition 會議論文集（台湾・中央研究院近代史研究所、中央研究院歴史語言研究所）
Volume: －
Pages: 1-12
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[Presentation] 清代考據學再考―以清代《尚書》學爲例―2016
Author(s)
伊東 貴之
Organizer
明末清初學術思想史再探國際學術研討（Revisiting Intellectual History of the Ming-Qing Transition）
Place of Presentation
台湾・中央研究院近代史研究所、中央研究院歴史語言研究所
Year and Date
2016-06-24 – 2016-06-24
Int'l Joint Research / Invited
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