2016 Fiscal Year Research-status Report
明治維新期の宗教都市伊勢の変容と府・藩・県における神仏分離政策の展開
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16K02187
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
河野 訓 皇學館大学, 文学部, 教授 (20329907)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神仏分離 / 神仏判然 / 神仏習合 / 伊勢 / 宇治山田 / 修験道 |
Outline of Annual Research Achievements |
三重県庁等の所蔵する明治維新関係の史料にある復正(還俗)・廃寺や寺院合併の願上書・届け類の文書及び廃寺の寺院建物・仏像・仏具などの廃棄や他寺院への移動記録を分析・整理した。また、明治20年前後に作成された三重県立総合博物館所蔵「度会郡宇治山田市の各町の図」について、記されている寺院を分析し、これまでに三重県庁所蔵「寺院建物絵図並田畑石高帳」、神宮文庫所蔵「寺院名録」から得た個々の寺院資料と突合し、データ化を行った。 明治維新期の神仏分離の波及を知るため、伊勢、隠岐、御嶽、津和野藩等に関する近代の資料を分析した。また、諸文献に記される明治維新時の諸藩における神仏分離の断行の実情確認のため各地の諸社寺や隠岐の島や御嶽山麓の神仏習合と神仏分離について調査した。対象とした神社は水若酢神社、玉若酢神社、王滝・御嶽神社、吉備津彦神社、吉備津神社、土佐神社、鶴岡八幡宮、伊豆山神社、三嶋大社、知立神社、猿投神社等、寺院は隠岐国分寺、最上稲荷、高知・善楽寺、竹林寺等である。伊勢市内では古市街道沿いの社寺及び神仏分離の際に廃寺となった寺院跡、外宮の鳥居前町である山田の社寺及び寺院跡、神祠、河崎地区の神社と祠堂、今一色の社寺、祠堂、玉城町田丸の寺院などの現地調査を行った。 また、収集した資史料により書写山円教寺、江島神社、粉河寺、多賀大社、御嶽、吉備津神社と吉備津彦神社、隠岐の島における神仏習合と神仏分離について整理した。今後は調査した他の社寺についても進める予定である。 各地の博物館に出品されている神仏習合美術や神仏分離に際して流出した仏像等を参観した。 これまでの研究に新たな知見を加え、明治新政府の神仏分離政策が引き起こしたことを中心に「1868年(慶応4年=明治元年)の神仏分離令」、神仏分離にともなう廃寺など宗教建築の消長に関して「東アジアの宗教建築」等の研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明治維新期を中心とした三重県庁や三重県神社庁が所蔵する史・資料文書のうちデジタル化したものを使い、分析を行って整理した。 伊勢市中の寺院跡の調査はできたが、社寺の所蔵する文書類や廃寺から流出した仏像類や文書類の整理については進んでいない。 三重県庁所蔵「寺院建物絵図並田畑石高帳」と「寺院名録」等の江戸時代から明治時代初頭にかけて成立した記録文書に出る寺院名・仏堂名等の突合はほぼ終え、整理と解読を進めた。 激しい廃仏毀釈が見られた地域への現地調査を予定していたが、日程が確保できず、隠岐島にしか行けなかった。予定していた佐渡島や旧津和野藩の調査は29年度に行う。ただし、入手できた文献史料の整理とデジタル化は一部、行った。 予定していた明治維新の神仏分離令により大きな変革を蒙った山岳信仰の調査では、御嶽については神社の祭礼にも参加し、現地調査を行い、報告をまとめることができたが、英彦山については調査に行けなかったので29年度に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も引き続き、関係資料の調査・収集、収集資料の整理と解読、研究発表・情報の交換を行う。 激しい廃仏毀釈の行われた地域で平成28年中に予定していた実地調査ができなかった佐渡島や旧津和野藩に加え、旧苗木藩や旧薩摩藩及び薩摩藩に属した現宮崎県の諸地域に関する文献史料の収集・整理、デジタル化と現地調査を日程と天候の許すかぎり続行する。また、神仏分離令により大きな変革を蒙った山岳信仰のうち、平成28年度中に行えなかった神道の神社として存続している英彦山に加え、仏教の寺院として存続している吉野や国東半島等に関する文献史料の収集・整理、デジタル化と現地調査を効率よく行う。 また、神仏分離令前後、各宗派本山や諸藩、明治政府との間で交わされた文書、書簡を分析し、各藩、各県で異なる神仏分離政策の展開を明らかにする。また、神仏分離政策の波及について、各地の社寺における神仏分離の時期やその程度など整理し、伊勢における神仏分離と各藩・各県の行った神仏分離との比較も試みる。 研究の成果を学会などで発表し、研究成果のまとめにあたっては専門的な知識を有する研究者や研究領域が近い研究者、伊勢市内の郷土史家との情報交換を行い、裏づけ、確認を行う。
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Causes of Carryover |
大学の校務に追われ、研究に十分な時間が取れてないので、実地調査も十分にできなかった。デジタル化用ソフト(GIS)の購入が遅れ、予算を消化できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度はデジタル化用ソフト(GIS)を購入するとともに、研究分担者を追加したことから、特に時間を要する入手した神仏分離・廃仏毀釈関係史資料の解読及び翻刻、神仏分離後に廃寺から移築された建造物や流出した仏像・仏具・文書の現地調査およびその状況の整理を積極的に進めたい。
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Research Products
(5 results)