2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02307
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
長谷川 慎 静岡大学, 教育学部, 准教授 (00466971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 敏子 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 名誉教授 (10090200)
野川 美穂子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50218294)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 柳川三味線 / 古態の楽器 / 地歌 / アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度入手した資料に基づき初年度に行った基礎的研究と仮説の再構築を行った。前年実施した成果発表会で来場者から「京都市内の邦楽器商で水張りによる皮張りが行われていること」という情報提供を受けたことに基づいて当該楽器商への聞き取り調査と研究代表者所有の楽器を水張りで修復を依頼した。その中で作業工程に関する画像資料の提供を受けることができた。完成した楽器を柳川三味線演奏家複数名に弾いてもらい、中でも戦前より柳川三味線で地歌の修業をした古老にはサワリがとても効いた良い楽器であるとの高評価をえた。8月には当該楽器を使用して舞台での演奏を行った。次に柳川三味線の演奏方法について、複数の演奏家に撥を当てる位置と皮面と撥の角度、撥を当てる強さについて実演をしてもらい、各人各様ではあったが「ムックリとした音」と表現される柳川三味線の音色を得るためにどのような工夫がなされているかについての情報収集を行うことができた。また関連して、京都上派を代表する地歌演奏家の萩原正吟の柳川三味線の演奏については、戦前は京都盲唖院でのレッスンのみで戦後は門弟への指導や公式の演奏(非公式で1度だけ演奏した)は行っていないという古老の証言について、別の萩原正吟門人に聞き取りを行いその証言が間違っていないことの裏付けを取ることができた。その他、楽譜と演奏音源を中心として、京都上派に伝わる地歌、祇園に伝わる地歌、柳川三味線についての関連資料の提供を受けることができた。京都在住の実演家の間では既知のことではあるが、京都上派の中でも、また同じ萩原正吟門下であっても同一の楽曲に複数の楽譜が存在し、そのいくつかの楽曲について楽譜を収集することができた。平成30年3月に京都市内で都内の音楽大学学生を対象として柳川三味線のレクチャーを実施し、小規模ではあるが研究成果の発表を行い研究成果を周知することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に立てた年次計画に基づいて研究を進めている。三味線製作者への調査では、伝統的な水張りの作業を撮影した写真の提供を受けた。三味線についての調査では、フィールドワークによって柳川三味線(三味線・駒・撥・皮・糸)の収集と採寸をおこなうこととしているが、これについては十分な数の採寸が行えていない。録音に残っているかつての柳川三味線の音色についての調査として、SPレコードによる録音が始まった大正からの音源を対象として、SP盤等に残っている録音を中心に収集・調査をおこなっているが、これも絶対数が少なく新たな音源の入手はできていない。しかし、戦後のLPや私的録音された音源の入手ができデジタルファイル化を行った。収集した楽器の中で整備可能な楽器について、実際に皮を張り楽器として使用可能な状態とする点については、1挺の整備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、これまでに行われた柳川三味線について研究に再整理をすることであった。その上で、楽器としてみた柳川三味線の古態と現在の楽器との異同を明らかにし、柳川三味線以外の地歌三味線との演奏表現の違い、京都上派における地歌伝承の現況調査を行うことである。加えて、その特徴的な音色が「水張りによる皮張り」であることを検証しつつ、現在の三味線の皮張りの状況調査を行うこと、そして、文化財的視点から楽譜・音源のアーカイブ化を目的とするものである。平成30年度は2年次に引き続き、三味線製作者への楽器及び皮張りに関する聞き取り調査、フィールドワークによって演奏家所有の柳川三味線の現物調査、演奏家へのインタビュー、師匠筋の芸談や自身の経験についての情報収集、録音に残っているかつての柳川三味線の音色についての調査を行なう。年度末に首都圏で成果発表演奏会を実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
29年度後期に現在所有の水張による柳川三味線との音色及び波形の相違を調査するために三味線の皮張り整備を行うために前倒し請求を行ったが、実際の費用に1万円未満の差が出たことで繰越が発生した。次年度末には首都圏で成果発表演奏会を実施する予定であることから繰越し金はその費用に当てる。
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Research Products
(1 results)