2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02316
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
桶田 洋明 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (30336317)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 絵画 / 技法 / アクリル絵具 / 絵具 |
Outline of Annual Research Achievements |
絵具による絵画表現において筆を使用せず、絵具を容器から押し出して表現する圧搾技法(あっさくぎほう・スクィージング)による描画技法の確立と提案を目的としている。具象絵画の代表的技法・並置混合の表現において、圧搾技法が効果的技法のひとつであることが、試作等による検証で実証できた。 一方で、圧搾技法のみによる表現は画一的であり、また画面の動勢や抑揚の表現には不向きであるため、筆による表現・特に透明・半透明色による透層表現との併用が望ましいことが判明した。それらの結果の確認方法の一つとして、試作品の画面を色彩計で測定を行った。試作品の画面を、同一の固有色で見られる明部から暗部へ変化する箇所の数値を測定し、変化の過程を確認した。 平成29年度からの継続研究として圧搾技法に適した容器の選定・開発に関しては、小型の油さし用の容器に見られるノズル形状が最適であることが、試作品の検証から判明した。そこで既存の絵具チューブに着脱可能なノズルの作成案を、大手画材メーカーA社に提案し協議を行ってきた。しかし高額な開発・製造費に対して低価格な商品となるため費用対効果が期待できないという結論となり、ノズルの開発・作成は断念した。一方で画材メーカーB社では大型のアクリル絵具チューブに取付可能なノズルの販売を開始していることから、B社に小型・中型チューブに取付可能なノズルの開発について協議する予定である。 平成30年度までの成果は論文「具象絵画における明暗表現に関する一考察」と、研究発表展覧会「絵の技法―桶田研究室からの発信―」にて発表した。展覧会では本学学生の試作品とともに、鹿児島女子短期大学生による試作品を発表し、圧搾技法による表現のほか、多様な表現技法や各描画材の特色・代表的な技法等について試作品・掲示ポスター・ギャラリートークにて解説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「圧搾技法に適した容器の選定、または開発」において、本研究に使用予定のアクリル絵具での使用に合致した形状として、既存のアクリル絵具チューブに装着可能なノズルの作成案を、大手画材メーカーA社に提案し協議を行ってきた。しかし高額な開発・製造費に対してノズルそのものは低価格な商品になることや、需要数の不透明さ等から、現時点では費用対効果が期待できないという結論となり、A社でのノズルの開発・作成は断念することとなった。 ゆえに他社との絵具チューブ作成に関する提案が必要となったことと、A社の結論が当該年度後半に判明したため、他社へのアプローチが当該年度後半以降となったことにより、絵具チューブ作成に関しては遅延している状況である。なお画材メーカーB社にて、大型のアクリル絵具チューブに取付可能なノズルの販売を近年より開始しているため、同形状で小型・中型チューブに取付可能なノズルの開発の可能性について協議する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
圧搾技法に適した容器の開発についB社に提案し、協議を行う。B社が製品化した大型アクリル絵具用チューブの取付ノズルを用いた試作等を行うことで同ノズルの特徴について検証し、それらの結果を含めて小型・中型のアクリル絵具チューブに取付可能なノズルの開発について提案していく。開発が不可能となった場合は、他社の絵具メーカーへの提案を試みる。 なお、開発の可否にかかわらず、引き続き各種学校において授業実践を行う。具体的には本学教育学部美術専修生、本学教育学部非美術専修生、鹿児島女子短期大学児童教育学科生、長野県上田高等学校生徒、本学教育学部附属小学校または鹿児島市内小学校児童等を候補としている。特に現時点で未実施である長野県上田高等学校生徒、本学教育学部附属小学校での実践を行い、表現方法の差異や適合度を検証し、また発達段階に合致した表現方法や指導法について明らかにしていく。 本研究の結果を論文および展覧会にて発表する。展覧会は鹿児島大学内展示会場を候補としているが、可能であれば学外施設での発表を実施する。圧搾技法およびその表現に適した容器の紹介や、圧搾技法による自身の作品と授業実践の際に制作した児童・生徒の作品を展示することで、社会的な還元をはかっていく。
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Causes of Carryover |
圧搾技法に適した容器の作成において、2018年まで画材会社A社と継続協議・検討をしたが、2018年末に、製品単価と制作コスト面等の関係で作成は断念することとなった。代わって近年から類似した容器を販売中のB社と、本技法に適した容器について協議を行う予定である。 現在B社が販売している大型チューブ用容器の試作実験やその成果発表、加えて、B社による新たな容器の作成のための協議や、実制作による検証等に関して継続研究をする。その際、容器の試作実験で用いる画材一式や、光学機器での検証費用、B社および参考作品を所蔵する美術館等への出張費が、助成金の主たる使途となる。
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Research Products
(9 results)