2016 Fiscal Year Research-status Report
一九世紀インドのテキスタイル見本に関する研究 ―「手仕事」をめぐって
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16K02347
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
平光 睦子 同志社女子大学, 生活科学部, 准教授 (70278860)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テキスタイル / 英国 / インド / 見本帳 |
Outline of Annual Research Achievements |
①実物調査 平成28年9月英国にて実物調査を行なった。主な調査の訪問場所、調査対象は以下の通りである。ハリス博物館・美術館(プレストン)Collections of the Textile Manufactures of India (1版)、英国立芸術図書館(ロンドン)Collections of the Textile Manufactures of India (2版)、ヴィクトリア&アルバート美術館クロスワーカーズ・スタディ・センター(ロンドン)19世紀インドのテキスタイル数点。調査の結果、対象とした見本帳には1866年に発刊された1版と1873年から制作された2版とがあり、それぞれの見本帳に収録された見本生地の多くが重複していること、1版には記されていたテキスタイルの価格表記が2版にはないことなどがわかった。また、19世紀に最高品質とされていたインドのダッカ・モスリンに触れ、現在のモスリンとは比較にならないほど繊細な布であったことが実感できた。 ②一次資料、二次資料の収集と通読 主に1866年のロンドン万博と1878年のパリ万博に関する資料を収集、通読した。1860年代から1870年代にかけて、英国の織物産業は機械化が進んだ結果として機械によって大量に産出される製品の販売先を必要としており、インドは原材料の輸入先から製品の販売先へと転換する時期であったことが明らかになってきた。また、パリ万博の資料からは、野蚕種によるタッサー・シルクを復興した功績で知られる英国人、トマス・ウォードルが1880年代に制作したテキスタイル見本帳の存在が判明した。15巻からなる見本帳には天然染料で染めた17世紀のインドのテキスタイルのサンプル3000点以上が納められており、制作された3部のうち1部がインドのボタニカル・サーベイで所蔵されていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①実物調査 実物調査において初めて見本帳に接触したことで、多くの収穫が得られた。見本帳自体の調査は概ね順調に進んでいると言っても良いだろう。また、調査の過程で、本研究の主要な対象であるジョン・フォブス・ワトソン制作の見本帳以外に、トマス・ウォードル制作の見本帳の存在が明らかになったことも大きな収穫であった。フォブス・ワトソンの見本帳の5年から10年後に制作されたこの見本帳は、やはりインドのテキスタイルを英国の工業製品の資料として活用するために制作されたもので、本研究にとっては、「もう一つの見本帳」とも言うべき重要な資料だと推測される。 ②一次資料、二次資料の収集と通読 文献資料の収集と通読も概ね順調に進んでいる。調査対象は、二つの見本帳が関連している1866年のロンドン万国博覧会と1878年のパリ万国博覧会に関する資料のほか、この期間に出版された英国の専門誌、The Art Journal、The Journal of the Society of Artsなどの記事である。産業技術史関連の資料、二次資料、参考資料にはほとんど着手できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
①実物調査 昨年度調査した英国の資料のうち、英国立芸術図書館所蔵の見本帳は再調査の必要がある。また、メトロポリタン美術館(米国・ニューヨーク)所蔵の見本帳についても実物調査を検討する。平成28年度、29年度の実物調査でえられたデーターを整理し分析に着手する。また、平成28年度の調査で発見された「もう一つの見本帳」、トマス・ウォードル制作の見本帳については他の研究助成金を申請中であるが無理のない範囲で調査を進める。 ②一次資料、二次資料の収集と読解 昨年度入手した資料の読解につとめつつ、他の専門誌や一般誌などを中心に資料収集につとめる。効率よく進めるために邦文資料も引き続き捜索する。これまでの文献による調査からは、19世紀後半の英国織物産業においてインドの織物が想定以上に重要な位置を占めていたことが徐々に明らかになってきたが、それに伴って背景にある問題の大きさも見えてきた。そのなかで、見本帳という極限られた対象に何をどこまで関連づけて考えるべきか、あらためて見直す必要性が生じてきたように思われる。なかでも「手仕事」という問題設定については粘り強くその射程を見定めて行きたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は設備備品費の未消化であるが、なかでも特に計画通りに支出しなかったのは①図書等資料代と②パーソナルコンピューター代である。 ①図書等資料代 計画では英国における実地調査は10日間を予定していたが、実際には6日間であった。時間に余裕がなく英国での資料収集がはかどらず、結果として図書費、資料複写代などが不要となった。 ②パソーナルコンピューター代 実地調査を実施したが、その結果を整理する作業が手付かずに終わったため予定していたコンピューターを購入しなかった。また、機動性を重視してタブレット型端末を購入し、実地調査にコンピューターを持ち歩く必要がなかったこともコンピューターを購入しなかった理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①図書等資料代 平成29年度も実地調査を行う予定だが、可能な限り日程に余裕をもたせた調査にし、十分に資料収集を行う。さらに、計画では断念していたメトロポリタン美術館の実物調査も合わせて検討する。 ②パソーナルコンピューター代 調査結果を整理する作業を進める。場合によっては今年度の予算と合わせて経費を捻出し、作業を委託、あるいはアルバイトを雇うことも検討する。それらを鑑みつつ、適切な機能のコンピューターの購入を検討する。
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Research Products
(3 results)