2016 Fiscal Year Research-status Report
初期草双紙における「絵と言葉」の補完的表現方法解明のための基礎研究
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16K02399
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
黒石 陽子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40247268)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 初期草双紙 / 赤本 / 黒本 / 青本 / 合巻 / 小学校 / 古典入門 / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は初期草双紙の黒本・青本を5点、後期草双紙の合巻を1点研究対象とし、それぞれについて諸本及び書誌調査、翻刻、注釈、絵の解釈を中心として研究を行った。6点いずれにおいても絵と言葉の補完的関係に重点を置き、その作品の特色を考察した。具体的な作品は以下の通りである。黒本・青本は『太平記綱目』『分福 丹頂鶴』『仁心蟹物語』『敵討美女窟』『金平猪熊退治』、合巻は『名将 大江山入』。 このうち『太平記綱目』は中世軍記『太平記』を元としているが、それをそのまま簡略化するのではなく、まず取り上げる話柄を選択し、その上で当代的な解釈を施している。また絵についても近世初期の絵入整版本『太平記』の絵とは大きく異なり、叙述に正確に絵画化していることが明らかになった。これらの言葉と絵が表現の上でどのような補完的な関係にあるかを詳細に考察した。また『仁心蟹物語』では先行作品と考えられる黒本『〔はんごんかう〕』との絵の影響関係を詳細に分析した。その結果、先行作品が描いた構図を踏まえながら、そこに新たな解釈を施して、全く新しい作品世界を作るという創作方法を見出すことができた。初期草双紙における絵は、その作品の中で完結してしまうのではなく、後代の作品がその先行作品の絵の構図や表した世界を踏まえて創作するという、近世文学にも共通する発想を持っていることが明らかになって来た。 また、上記以外に赤本『〔化け物よめ入り〕』を小学校の古典の入門教材として教材化し、授業実践をするという試みを行った。初期草双紙が小学校の古典学習の教材としていかなる可能性を持つのか、特に絵と言葉との補完的関係性が児童の興味・関心といかに結びつくかを検討した。なおこれらは「叢 草双紙の翻刻と研究」38号としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作品選定、調査・翻刻等基礎的な作業は概ね順調に進んでおり、現時点では特に支障は来していない。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な研究方針、及び調査方法等28年度と同じ形で推進していく。29年度についても数作品の具体的な調査・分析を進め、その成果を研究誌としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
資料収集にあたり、今回取り上げた作品については、予想していたよりも金額がかからなかった。また旅費を使用する調査計画を本年度は実行できず、次年度に廻すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料収集として10万円程度。調査旅費として15万円程度。
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Research Products
(1 results)