2016 Fiscal Year Research-status Report
19世紀初頭・長編小説生成期における構成・素材・記述に関する総合的研究
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16K02411
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
木越 俊介 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (80360056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 則雄 島根大学, 法文学部, 教授 (00252891)
中尾 和昇 奈良大学, 文学部, 講師 (00743741)
菱岡 憲司 有明工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (10548720)
藤澤 毅 尾道市立大学, 芸術文化学部, 教授 (20289268)
藤川 玲満 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (20509674)
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30515838)
大屋 多詠子 青山学院大学, 文学部, 准教授 (50451779)
天野 聡一 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (50596418)
三宅 宏幸 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (90636086)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 享和年間 / 読本 / 絵本 / 実録 / 図会 / 曲亭馬琴 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究を進める上で、年2回の研究会を実施した。具体的には、計画通り、まずは対象とする年代の初期にあたる享和年間(1801~4)に刊行された読本作品の解題を各自が執筆し、それを集積し、問題点などを議論した。こうした検討を通して得られた共通の認識として、いまだ読本というジャンルが明確に定まっていない時期ゆえの作品としての多様性が認められた。以下、「研究目的」に記した、作品を分析するにあたっての3つのポイントに沿って、今年度の実績をまとめておく。 〈構成(骨組み・屋台骨にあたる部分)〉この点に関しては、強い構成力を有する作品はそれほど多くなく、基本的には、中国の話や実録といった、原拠となる作品をベースにしていることが認められた。これは後述する〈素材〉の問題とも関わるが、読本という確固としたジャンルがあるわけではなく、既製の長編の物語群を読みものとして多少加工を施す、というレベルのものが多いといえる。ただし、中には長編においてテーマを焦点化しようとする傾向も認められた。また、この時期は習作段階であるが、曲亭馬琴の読本(『小説比翼文』)は、他の同時期の作品に比して、構成意識が強く感じられた。 〈素材(〈構成〉〈記述〉する際の元になった種)〉素材については、中国の話や日本の実録、軍記が採用されることが多い。そこに絵という付加価値を加えた絵本が多い。演劇との接点はそれほど大きくはない。 〈記述(物語を具体的に押し進めていく駆動部分)〉叙述については、作品内の時間の流れ方が、叙述の順序と一致していることが多く、物語展開が比較的素直であった。 以上、ジャンルとしての揺籃期ならではの特色が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、年度内に研究会を2回開催することができた。1回目は、九州産業大学において、2016年9月4、5日に、2回目は、尾道市立大学において、2017年3月26、27日に行った。第一回開催にあたっては、事前に本研究の4年間のスケジュールをはじめ、これに伴う諸々のディティール(研究会の進行計画、原稿の書式の統一化)などをメールにより相互に確認した上で臨んだ。その準備の成果もあり、研究会は初回から順調にスタートすることができた。今年度の基本方針は、享和年間(1801~1804年)に刊行された読本について、各自がフォーマットに則って解題を執筆し、研究会で報告、その問題点などを議論する、とした。それぞれの回で解題の対象とした作品は、以下の通りである。 【第一回】『[灯火戯墨]玉之枝』(享和2)、『絵本伊賀越孝勇伝』(享和2)『[中古奇談]双葉草』(享和2)、『小野小町一代記』(享和2)、『絵本二島英雄記』(享和3)、『絵本加々見山列女功』(享和3)、『絵本拾遺信長記』(享和3、文化1)、『小説比翼文』(享和4)、『絵本発功伝』(享和4)、以上9点。 【第二回】『保元平治闘図会』(享和元)、『深窓奇談』(享和2)、『立身竜之天上』(享和2)『環双紙』(享和3)、『蜑捨草』(享和3)、『絵本箱根山霊応記』(享和3)、『絵本亀山話』(享和3)『聖徳太子伝図会』(享和4)、『播州舞子浜』(享和4)、『敵討朝妻舟』(文化3)、以上10点。 当初の計画通り、各メンバーがそれぞれのテーマごとのチェック役をも兼ねており、「研究実績の概要」もそのフィードバックに基づいており、研究体制も取り立てて見直す点は認められない。方向性、内容ともにおおむね順調に進んでいると認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、前年度と同様のフローで研究を行う。解題において重点化するものは、文化元年・2年刊の作品(26 点)であり、これらの執筆を行い発表する。また、1年目で達成できなかった享和年間の解題分は2年目にフォローし、取りこぼしのないようにする。 共同研究会は年度内2回、〈実録・絵本と読本の関係〉を重点テーマとして開催する予定である。また、これと平行して、研究代表者は未入手資料の調査・収集にあたる。具体的には、専修大学附属図書館・国立国会図書館などを予定している。 資料の共有については、計画通りクラウドを試験的に使用したが、期間中に使用中のクラウドのサービス規定が変更になり、目下見直しを迫られている。2年目の当初に、新たなクラウドによる資料の共有化の方針を定め、実際に運用することが求められる。
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Causes of Carryover |
研究代表者が年度途中に所属先が変更になり、移管手続き上に時間を要したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該研究に資する調査、ならびに資料や物品の購入などに使用する予定である。
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Research Products
(14 results)
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[Book] 世界史のなかの近世2017
Author(s)
青木敦,武内信一,狩野良規,渡辺節夫,佐伯真一,大屋多詠子,岩田みゆき,秋山伸子
Total Pages
272(157-188)
Publisher
慶応義塾大学出版会株式会社
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[Book] 海の文学史2016
Author(s)
鈴木健一,天野聡一ほか全19名
Total Pages
314(200-216)
Publisher
三弥井書店