2016 Fiscal Year Research-status Report
1816年夏シェリー・バイロン・サークルの文学的交流の領域横断的研究
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16K02473
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
阿部 美春 立命館大学, 経営学部, 非常勤講師 (60449527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 順路 明星大学, 教育学部, 教授 (00194712) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イギリス文学 / パーシー・B・シェリー / メアリ・シェリー / バイロン / ルソー / プロメテウス / 1816 / ロマン派女性詩人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『フランケンシュタイン 現代のプロメテウス』の着想(1816)と出版(1818)から二百年目の2016 年~18年に、作品誕生のミリュウに着目し、1 恐怖小説競作の発端1816年夏レマン湖畔でのシェリー・バイロン・サークルの文学的交流を周辺から検証する、2 従来射程外に置かれてきた女性詩人のプロメテウス・モチーフの作品を掘り起こし、男性詩人一辺倒ではない時代のプロメテウス熱を解明することをめざすものである。 初年度は、日本シェリー研究センターと連携し、バイロンとヨーロッパ思想の専門家を招聘し、相浦玲子氏による講演「ディオダーティ荘における恐怖小説饗宴をめぐって」、阿尾安泰氏による講演「ルソーからみた『フランケンシュタイン』」およびシンポジウム「1816年夏ジュネーヴ湖畔におけるシェリー・バイロン・サークルの文学的交流」を持った。相浦氏の講演は、1816年夏のもうひとつの成果『ヴァンパイア』とヴァンパイアリズムの系譜およびバイロンとメアリの共通体験(スコットランド)を論じ、作品背景をめぐる知見を広げた。阿尾氏の講演は、ルソーからロマン派へという連続性を自明とする従来の見解に疑義を呈し、「生命」「科学」「家族」「国民国家」に焦点をあて、悪夢として描かれる生命創造、恐怖として描かれる家庭、崩壊する家族に、18世紀からの連続性ではなく、神と生命をめぐる観念の変化、国民国家による管理と保護、その結果としての外部の恐怖という19世紀の特殊性を浮かび上がらせ、時代をめぐる新たな眺望を開いた。 19世紀のプロメテウス・カルトをめぐり、女性詩人が男性詩人と、どのように時代の感受性を共有しているか、あるいは共有していないか、初年度は、1990年代に相次いで刊行されたロマン派女性詩人アンソロジーおよびその後刊行された個々の詩人の作品集に、プロメテウス・モチーフの作品掘り起こしを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究課題1 1816年夏シェリー・バイロン・サークルの文学活動の検証は、計画通り日本シェリー研究センターと提携して、外部から専門家を招聘して講演とシンポジウムを持ち、研究代表者は司会をつとめた。ロマン派第二世代の文学的交流とそのミリュウについて専門的観点から新たな知見を得た。これらの成果をホームページにおいて公開した。 もうひとつの研究課題2 女性詩人のプロメテウス表象研究は、計画通りイギリス・ロマン派女性詩人のプロメテウスをモチーフとした作品の掘り起こしを進め、現時点で、ロマン派時代とヴィクトリア朝時代を含めて、レティシア・エリザベス・ランドンによる詩、エリザベス・バレット・ブラウニング、オーガスタ・ウェブスターによる翻訳等、プロメテウス・モチーフの作品はきわめて少ないという結論に至った。同時に、男性詩人・作家を含め、ロマン派時代よりも、むしろヴィクトリア朝時代に、プロメテウス・モチーフの作品が夥しく生まれ、その含意もきわめて多義的であることが見えてきた。このヴィクトリア朝時代の多義的プロメテウス表象は、今後、数少ない女性詩人の作品読解に、有用な視座を提供するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1 『フランケンシュタイン』誕生のミリュウについて、当時シェリー・バイロン・サークルが耽読し、恐怖小説競作の契機となったドイツ恐怖小説について、最終年度2108年にドイツから専門家を招聘して公開講演を持つ準備を進める。また「プロメテウス・カルト」をテーマとしたシンポジウムの準備を進める。 課題2 女性詩人のプロメテウス表象研究では、収集した資料をもとに、フェリシア・ヘマンズ、レティシア・エリザベス・ランドン、エリザベス・バレット・ブラウニングの作品を、プロメテウスの系譜という観点から検証し、口頭発表する。また、ロマン派のプロメテウス表象に影響を与えた原典に可能なかぎりあたり、プロメテウス表象研究の基盤を補強する。 シェリー・バイロン・サークル関連の写本を所蔵するニューヨーク・パブリック・ライブラリーでの調査は、当初計画していた本年度ではなく、2018年5月ハンチントン・ライブラリーで開催が予定されているロマン派200年祭参加と合わせて実施する。
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Causes of Carryover |
旅費に関して、初年度に予定していた、ニューヨーク・パブリック・ライブラリでの調査を延期したため、使用額に変更が生じた。
人件費・謝金に関して、初年度に海外から専門家を招聘し講演を開催する予定であったが、講師の都合で最終年2018年に延期したため、使用額に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ニューヨーク・パブリック・ライブラリでの調査は、2018年度に、ハンチントン・ライブラリでの『フランケンシュタイン』誕生二百周年記念大会参加と合わせて実施する。海外招聘講師の講演は、2018年度に開催する。講師にはすでに内諾を得ている。
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Research Products
(1 results)