2017 Fiscal Year Research-status Report
1816年夏シェリー・バイロン・サークルの文学的交流の領域横断的研究
Project/Area Number |
16K02473
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
阿部 美春 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (60449527)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 順路 明星大学, 教育学部, 教授 (00194712) [Withdrawn]
木谷 厳 帝京大学, 教育学部, 准教授 (30639571)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | プロメテウス / ロマン派女性詩人 / プロメテウス熱 / アイスキュロス / フェリシア・ヘマンズ / L.E.L. |
Outline of Annual Research Achievements |
ロマン派女性詩人のプロメテウス表象研究の二年目、ロマン派女性詩人が直接プロメテウス・モチーフを用いた作品はきわめて少ないが、そのひとつランドン(L.E.L.)による先輩詩人フェリシア・ヘマンズへのエレジー(1838)を中心に、時代の主要なプロメテウス作品と比較考察し、時代のプロメテウス像の新たな眺望を得た。 ロマン派時代は、プロメテウス熱の時代と言えるほど、文学、音楽、絵画と多様なジャンルでプロメテウス作品が生み出された。ゲーテを皮切りに、バイロン、シェリー、ウルストンクラフトが、プロメテウス・モチーフの作品を書いている。彼らに共通するのは、ゼウス(ジュピター)の体現する権威に抗い、自由を求めるプロメテウス像であり、そこに理想の自画像を重ねる点である。ゼウス不在という点では、メアリ・シェリーの「現代のプロメテウス」と共通するが、「現代のプロメテウス」は自らがゼウスに等しい存在となる点で異なる。L.E.L.は、苦悩するプロメテウスを同時代の詩人と共有しつつ、ゼウスを排することで、神話の力学を変え、プロメテウスを抵抗の表象から、苦悩と共感の表象に書換える。それは、直接プロメテウス・モチーフを用いた作品だけでなく、「心を苛む禿鷲」(『エセル・チャーチル』)のようにプロメテウスを想起させるメタファーを用いた作品においても同様である。 さらに、苦悩するプロメテウスを女性詩人に重ねるL.E.L.の作品は、苦悩を共感の契機として、同時代の女性詩人の作品と詩的対話を形成していることが浮き彫りになる。考察対象としたエレジー「フェリシア・ヘマンズ」の場合、メアリ・タイ、フェリシア・ヘマンズ、そしてエリザベス・B・ブラウニングのエレジーとの対話を見ることができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題1 1816年夏シェリー・バイロン・サークルの文学活動の検証は、計画通り、日本シェリー研究センターと連携して、専門家の招聘を含め、最終年度の講演とシンポジウムのための準備を整えることができた。 研究課題2 女性詩人のプロメテウス表象研究は、計画通り、前年掘り起こしたL.E.L.のプロメテウス・モチーフの作品および関連作品を、プロメテウス熱時代の典型的作品群と比較考察し、プロメテウス熱の新たな眺望を得ることができた。成果を「女性詩人と「プロメテウス」― フェリシア・ヘマンズとL.E.L.」として、関西コールリッジ研究会で口頭発表した(2017年11月25日同志社大学)。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題1 日本シェリー研究センターと連携しての1816年夏シェリー・バイロン・サークルの文学活動の周辺の検証。今年は、恐怖小説競作の発端となったドイツ恐怖小説の影響について、ドイツから専門家を招聘し、日本シェリー研究センターの大会で講演を開催する。 課題2 ロマン派女性詩人のプロメテウス表象研究。最終年は、ロマン派からヴィクトリア朝への移行期のふたりの詩人Elizabeth・B・BrowningとJulia・A・Websterによるアイスキュロスのプロメテウス翻訳作品に焦点をあて、女性詩人のプロメテウス表象における継承あるいは断絶を検証する。 また、課題1と2に関わる、時代のプロメテウス熱について、シンポジウムを持つ。パネルとして外部から専門家を招聘する。研究代表者はパネルの一人をつとめる。
|
Causes of Carryover |
初年度に予定していた海外からの招聘講演を、講師の都合により、最終年度に実施することになった。2018年12月に招聘講演を実施する。二年目に予定していた海外での資料調査を、研究代表者の怪我のため、最終年度に実施することにした。
|
Research Products
(1 results)