2018 Fiscal Year Research-status Report
1816年夏シェリー・バイロン・サークルの文学的交流の領域横断的研究
Project/Area Number |
16K02473
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
阿部 美春 立命館大学, 経営学部, 非常勤講師 (60449527)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 順路 明星大学, 教育学部, 教授 (00194712) [Withdrawn]
木谷 厳 帝京大学, 教育学部, 准教授 (30639571)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | プロメテウス / 女プロメテウス / ロマン派女性詩人 / アイスキュロス / レティシア・エリザベス・ランドン / ドイツ恐怖小説 / インゴルシュタット / 科学者 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の三年目、『フランケンシュタイン』誕生のミリュウ解明に関して、日本シェリー研究センターと連携し、ドイツからロマン派の専門家クリストフ・ボード氏を招聘し、Germany in Frankensteinという演題で講演をもった。ボード氏は、従来等閑に付されてきた、ドイツ的なものが作品のプロットや知的側面にどのように関わるのか、当時のインゴルシュタットの知的風土、幽霊譚『ファンタズマゴリアーナ』の知的背景、カントの崇高を手がかりに詳細な検証をし、新たな眺望を拓いた。 女性詩人のプロメテウス表象研究では、イギリス小説の専門家廣野由美子氏を招聘し、日本シェリー研究センターと連携して、シンポジウム「プロメテウス・カルトと『フランケンシュタイン』」を持った。センターからアルヴィ宮本なほ子氏がレスポンス・司会として、研究代表者はパネリストとして参加した。廣野氏は「「現代のプロメテウス」とは何か?ー『フランケンシュタイン』再読」というテーマで、ヘシオドス、アイスキュロス、オウィディウスの原点に立ち返り、女性作家メアリの「現代のプロメテウス」の独自性と現代性を検証した。研究代表者は「苦悩するプロメテウスの後裔ーロマン派女性詩人のプロメテウス」というテーマで、ロマン派が祖型としたアイスキュロスの『縛められたプロメテウス』を、劇の大分を占めるコロスとの対話に着目して再検討し、プロメテウスの抵抗と苦悩がコロスの共感を呼び覚ますという劇の核心が、女性詩人ランドンのプロメテウスに継承されていること、そこに、時代精神と共鳴する、男性詩人やウルストンクラフトの反逆するプロメテウスとは異なる、ポスト・ウルストンクラフト世代の女性詩人のプロメテウスの独自性があることを検証した。プロメテウス神話の原点に立ち返った考察により、プロメテウスの系譜における女性詩人・作家の継承性と独自性が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1 1816年夏シェリー・バイロン・サークルの文学活動の検証では、計画通り日本シェリー研究センターと連携し、ドイツから招聘したボード氏による講演を持ち、ドイツの思想・科学・恐怖小説・哲学の知的風土が、『フランケンシュタイン』の着想とプロットに与えた影響について新たな眺望を得た。 課題2 女性詩人のプロメテウス表象研究では、ロマン派が祖型としたアイスキュロスのプロメテウス劇を再吟味することにより、プロメテウスの系譜における、ポスト・ウルストンクラフト世代の女性詩人ランドンの継承性と独自性を検証した。その成果を日本シェリー研究センターのシンポジウムで口頭発表した。(2018年12月1日立命館大学) 2016年から2018年、日本シェリー研究センターと連携して行ってきた講演とシンポジウムを含め、研究成果を本として刊行し一般に公開するという課題を、現在進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究課題の成果を、2016年から2018年度開催の講演とシンポジウムをはじめ、シンポジウム以降の研究成果を含めて、専門家のみならず社会一般に敷衍する目的で一般書籍として発信する。具体的には、2019年度中に書籍として成果発信するため、出版社と連携し編集作業を進める。
|
Causes of Carryover |
研究課題の成果を、2016年から2018年度開催の講演とシンポジウムを含め、専門家のみならず社会一般に敷衍する目的で一般書籍として成果発信を行うことを計画していたが、2018年度シンポジウムおよびそれ以降、ロマン派からヴィクトリア朝の文学運動の裾野解明という課題に関して、当初の目論見を越える知見を深め得たことをふまえ、学術的にさらに追求した上で成果を公開するため、出版計画を見直し、研究活動を継続の上2019年度中に書籍として成果発信をすることにしたため。
|
Research Products
(1 results)