2016 Fiscal Year Research-status Report
フランスの対外文化政策の一環としてのクローデルの駐日大使赴任に関する調査と研究
Project/Area Number |
16K02547
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
根岸 徹郎 専修大学, 法学部, 教授 (90349176)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 仏文学 / 外交史 / 文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、研究の初年次として、全体のベースとなるフランスの外交方針とポール・クローデルの日本における外交官および文学者としての活動について、はば広く資料の収集、および検討を行った。 とくにクローデルが日本で執筆した戯曲『繻子の靴』をめぐり、京都造形芸術大学での上演と関連して、演出家の渡辺守章氏との情報交換および関連企画への参加を行い、この戯曲の解読に取り組むとともに、この作品等に反映されているクローデルの東洋観、日本観に関して、考察を進め、『繻子の靴』と同時期の作品『女と影』に関して、日本への影響も含めた、多角的な検討を加え、発表した。 また、インドシナ半島とフランス植民地をめぐる資料の読解を進め、1920年当初のクローデルおよびフランス外務省の植民地に対する姿勢の検討を行い、成果を発表した。 さらに、クローデルの日本観、日本理解を整理するために、この詩人大使が日本に駐日大使として赴任した前後の日本文学の状況に関して、自然との関わりおよび「聖地」という視点から比較検討を行う準備として、資料等の収集およびフィールドワークを実施した。さらにそれに合わせ、日本人にクローデルの考えがどのように理解され、受け止められたのかという点に関して、同時代およびのちの文学、思想関係者のクローデルに対する言及を整理し、分析を行った。 他方、本研究の成果発表のひとつと位置付けている、2018年度に開催予定のクローデル関係のシンポジウムおよび神奈川近代文学館における展覧会の企画に関して、共同企画者と数回の会合を持ち、実現に向けて具体的な検討を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の課題としたクローデルの日本での活動および植民地におけるフランスの政策方針に関する研究は、インドシナ半島での調査、報告など、具体的な成果を上げている。 また、クローデルが日本で完成させた戯曲『繻子の靴』に関する研究および同時代の日本文学の状況、関わりに関する研究も深めることができている。 さらに、成果の発表として平成30年度に予定している神奈川近代文学館における展覧会の準備も、具体的な段階で進展中であり、予定通り進んでいる。 その一方で、平成28年度の予定に入っていた第一次世界大戦中のフランスの文化外交およびプロパガンダに関しては、現在、新たな資料の収集およびその分析中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
クローデルの外交官活動とフランス本国の文化外交方針、とくにフランス語の普及に関わる点について、さらに研究を進める。 平成29年度は、京都の関西日仏学館設立をめぐるクローデルの考えを中心として、フランスの文化外交政策と各地のフランスの学院、学館の機能と設立目的を検討しながら、1920年代のフランスの文化外交について考察する。 また、平成28年度の課題の目標である、第一次世界大戦前後のフランスの文化広報活動に関して、現在進行中のものも含め、引き続き検討を進め、1920年代の日本に対するフランスの外交方針との関連を検討する。
|
Causes of Carryover |
平成28年度は、当初予定していた機器の購入を見送り、必要資料等の収集・購入を優先させたために、全体の使用額に予定との差額が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はこの額を合算したうえで、機器購入に充てる予定である。
|
Research Products
(4 results)