2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02582
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 正光 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60272621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 未来 茨城女子短期大学, 表現文化学科, 講師 (30781603)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 唐詩 / 異読 / 訓読 / 唐宋詞 / 俗語 / 語彙解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
唐詩に使用される語彙には、時代や地域性、社会階層、文化習慣により特有の意味を持つ語(以下、異読と称する)がある。本研究は、その異読語彙を摘出・整理してその特殊な意味を学術的に包括し、異読の文学的効果、創造性の意義を検証することを目的とするものである。 初年度と来年度の二年間は、主に唐詩に使用される膨大な語彙の中から、異読語彙の摘出と整理、語義確定に専念する。今年度は先行研究の整理を行った。中華書局編輯部編『詩詞曲語辞辞典』(中華書局、2014年)は、張相『詩詞曲語辞彙釈』(中華書局、1954年)、王鍈『詩詞曲語辞例釈』(中華書局、1986年)、王鍈・曾明徳『詩詞曲語辞集釈』(語文出版社、1991年)の三冊を再編成し、広範囲の詩詞曲から特殊な意味を持つ語彙を取り上げて、その意味を定義する書である。代表者と分担者は昨年度よりこの書に収める異読語彙の検討を進めており(高橋未来・佐藤正光「中華書局編輯部編『詩詞曲語辞辞典』に見る唐詩の特徴的な用法について」、『東京学芸大学紀要人文社会科学系Ⅰ』第67集、2016年1月)、今年度も引き続きこの書を中心に検討を進め、収録語彙を振り分けて研究代表者、分担者、協力者により翻訳を進めた。 担当した語彙について全体で六回の研究会を開いて討議し、語彙の意味と訓を確定して、その用法について考察した。この成果は、佐藤正光・高橋未来・有木大輔・西村諭「中華書局編輯部編『詩詞曲語辞辞典』に見る唐詩の特徴的な用法について(2)」(『東京学芸大学紀要人文社会科学系Ⅰ』第68集、2017年1月)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は共同で研究・検討を行うための機器、辞典、工具書等の環境を整え、『詩詞曲語辞辞典』収録語彙のうち、各自が調査・検討する範囲と分量を決定した。代表者の研究室に所属する大学院生二名が、原典の確認と語彙のデータベース化の作業に当たり、二ヶ月に一度のペースで研究会を開いて、各自の担当語彙の確認と用法についての考察を行った。来年度までにおおむね語彙の調査を終える見込みである。再来年度は、調査した語彙のうち異読語彙を確定し、その特徴や用法の傾向について検討を行っていく予定である。 今年度、各担当者が翻訳を行った語彙については、抜粋して『東京学芸大学紀要人文社会科学系Ⅰ』第68集に発表した。その結果、例えば「衝」に「おかす」の意味があるということは日本の古辞書に見えず、現代の漢和辞典では「衝天」を「天をつく」と解釈しているが、杜甫「暮秋将帰秦留別湖南幕府親友」詩の「衝雨雪」は「雨雪をおかす」と解するのが適切であるということなど、これまでの古訓に基づいた訓読では意味が通じない語彙が多数見出された。この研究の目標である唐詩解釈の精確な理解に対して、異読語彙の検討が有効かつ必須であることが確認された。 異読語彙のデータ化は、今年度中に完了した。来年度以降、その語義・出典、特徴などを順次入力してゆく。異読語彙に関する先行文献のリストは来年度中にまとめ、公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も引き続き『詩詞曲語辞辞典』を中心に異読語彙の翻訳と検討を行い、唐宋時代の詩と詞に使用される語彙については年度内に翻訳を終えるよう進めていく。先行文献の収集と整理を集中して進め、リスト化して公表する。また収集した先行文献資料と比較し、解釈の異同等について具体例を取り上げて分析を行い、現在の語彙分析結果についての有効性を検証する。 今年度は膨大な数の語彙に対して協力する院生が不足したため、来年度からは原典の収集を担当する院生を五名に増やし、異読の語義、用法の検討をより集中して行えるよう体制を再整備する。また研究代表者、研究分担者、研究協力者は翻訳に加えて語彙の考察を行い、研究会や論文誌等に発表して研究成果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は本研究の初年度に当り、支出を慎重にしたため旅費等を抑えた結果、次年度へ繰り越す金額が生じた。次年度も『詩詞曲語辞辞典』所載の語義と用例の原点資料の収集とデータベース化を計画通りに進めるため、担当する院生を増員する必要があり、繰越金はその謝金に充てる。 研究代表者、分担者、協力者は引き続き語彙の用法とその特徴について分析を進める。今年度の進捗状況を踏まえ、さらに効率よく迅速に作業を進行するために、研究会の回数を増やすとともに内容を合理化する。その他、次年度からは唐詩語彙研究について研究成果を一部発表する予定である。そのため関連する研究文献の購入、研究成果を発表するための論文の打ち合わせ、学会・集会等への参加を予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
検討する語彙の用法とその特徴について、分析・検討の迅速化を図り研究会の回数を増やす。そのため研究担当者、協力者の交通費を増額する。用例の原点資料の収集とデータベース化を担当する院生を二名から五名に増員する。そのための交通費・謝金・資料収集等の経費を要する。 その他、唐詩語彙研究に関する書籍の購入、研究成果を発表するための学会・集会等の参加を計画している。以上の計画遂行のために必要経費を算定した。
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Research Products
(1 results)