2018 Fiscal Year Annual Research Report
Reading Taiwan:Banchi (Savage Land)Stories and the Structure of Formation of Taiwan Indigenous Imagery
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16K02597
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
小笠原 淳 熊本学園大学, 外国語学部, 准教授 (70634137)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 台湾「蕃地」 / 台湾原住民表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度には戦前と戦後の文学テクストのなかに描かれた台湾山地原住民と「蕃地」の表象を解析し、その研究成果を学術研究会「現代中国語圏文芸における逸脱の表象」(6/16、金城学院大学)や学術研究会「日本統治期台湾の女性――文学創作における山地女性表象の生成について」(1/26、熊本学園大学)で発表した。前者は中村地平の初期作品に特徴的な「南方憧憬」がテクストにおいてどのように表象されているのかという問題を考察したものである。本研究の目的の一つに掲げているテクストにおける「ロマンス」の要素が、中村の初期作品「熱帯柳の種子」においても確認されることを考察した。「南方の風景に弛緩され虚無を感じる私」(内地の知識人男性)と対照的な存在として本島人女性が描かれ、その外貌の奔放さや南方的な明るさ素朴さが、文明の衣をまとった内地出身の主人公に自省をうながし、彼女の人性を純真で高貴なものへと昇華させている。本研究を通して中村のテクストにおいて台湾の「蕃地のロマンス」という類型が生成され、宗主国の「文明」と植民地台湾の「野蛮」という対置関係が示されていることが明らかになった。後者では坂口れい子の「蕃地」物語の生成メカニズムを、戦後の未発表の作品「樹霊」の分析を通じて明らかにしようと試みた。台湾大学の黄美娥教授を招聘し、「「其後」與「餘生」:坂口玲子〈番婦羅婆的故事〉霧社事件相關書寫」や蕃地物語の生成についての議論と意見交換を行った。この研究を通じて、坂口の戦後の蕃地小説「蕃婦ロポウの話」における原住民女性像の生成過程が、「樹霊(1)」及び「樹霊(2)」の執筆傾向から明確に読み取られるという共通認識と、新しい研究結果を得た。坂口玲子の台湾原住民をめぐる物語の生成については、「多様化する文学、漂泊する作家たち」『教養の文学史』(2018)のなかでも取り上げた。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 教養の中国史2018
Author(s)
小笠原淳著、津田資久、井ノ口哲也編著
Total Pages
372
Publisher
ミネルヴァ書房
ISBN
978-4-623-08031-1
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