2016 Fiscal Year Research-status Report
グローバルネットワークによる母語・バイリンガル教授法開発に関する研究
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16K02812
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
落合 知子 神戸大学, 国際人間科学部, 准教授 (50624938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 真弓 関西大学, 総合情報学部, 教授 (20268329)
松田 陽子 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (80239045)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 母語学習 / バイリンガル教授法 / 教育工学 / 語学学習モチベーション / 異文化間コミュニケーション / 学習環境デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は複数言語環境下にある外国人児童を対象に、グローバルな母語学習ネットワークを構築し、母語と学習言語(日本語)の習得を目指したバイリンガル教授法を開発し、その学習効果を検証することを目的とする。具体的には下記の2点を研究の目的とする。「1)母語・バイリンガル学習のためのグローバルネットワークの構築とその維持・促進要因の分析」「2)母語・バイリンガル学習の動機付けと、学習者の多様性に対応した母語・バイリンガル教授法の開発とその効果の分析」 この研究目標のうち年少者母語学習者の母語学習の動機づけを目指した教授法としてバイリンガルビデオレターの作成とその効果の測定を目指し、また、ベトナム・韓国の日本語教室との間でのネットワーク確立を目指して研究活動を行った。 2016年度の主な成果は①神戸市のベトナム系児童のための母語教室にてバイリンガルビデオレターを作成し、ベトナムの児童との間で交流するチャンネルを確立したこと、②韓国語のビデオレター交流の準備を始めることであった。 ①に関してはベトナム・ハノイにて、日本からの帰国児童(ベトナム系日系混在)の日本語維持のための日本語教室(以下CLB)がその交流相手として確定できた。2016年春の訪問以来、ネット上で数度のビデオレターの交換をすることができた。 この活動経過を2017年3月発行の書籍『多文化児童の未来をひらく―国内外の母語教育支援の現場から』松田陽子・落合知子編の第4章「バイリンガルビデオレターによる教授法と母語学習の動機づけ」(pp.47-60)にまとめた。また2017年3月25日の兵庫県国際交流協会主催の母語教育研修会でも母語教育実践者に取り組みの概要を紹介することができた。 ②については神戸のハングル母語学習クラス「オリニソダン」によるバイリンガルメディアの制作ワークショップを行い、交流先との試行錯誤が行われている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイリンガルビデオレターの作成と交換による年少母語学習者の母語習得モチベーションを高める教授法の開発について、日本とベトナムの間の双方の国の年少者バイリンガル話者による日本語・ベトナム語バイリンガルビデオレターでの交流はFACEBOOKなどのSNSを活用することで、当初の予定よりも多く、すでに何往復かの交換ができており、軌道に乗せることができた。しかしそれとは対照的に韓国との日本語・韓国語バイリンガルによる年少母語学習者の交流活動に当初の計画ほどの進捗が見られなかった。交流先として内定していた韓国ソウルの日系児童のための日本語母語教室「たけのこ」の活動が不活発期に入っており、今一度韓国に行き交流相手の選定をし直すか、あるいは、日本国内の大阪の団体との交流に変更するか現在関係者の間で検討を重ねている。 母語教室には構成メンバーや主催者のライフサイクルとの関係で活動期と活動の停滞期が交互にやってくる。そうした時期を見極めつつ協力団体を探すことの困難さもある。母語教育の活動母体の不安定さという母語教育の根本的な弱点もあるが、そうした弱点を克服しながら活動する母語教育団体を地道に探し、ネットワークを確立する方法を考えていきたい。またこのバイリンガルビデオレターを用いたバイリンガル教授法が学習者の語学習得動機を高め、活動を安定させる一助にもなればと考えている。 これらの2つの国でのでの試行錯誤を経ながら母語教育団体のネットワークの促進・阻害要因に関する研究データを蓄積している。
またビデオレターの効果に関するDLAやPAC技法を用いた測定を予定していたが、これは関係者へのインタビューにとどまり、数値化した学習効果を測定するのは2017年度後半以降の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度前半でネットワーク交流を持つ母語学習団体を確定させ、交流を安定的に行って行ける体制を確立したい。その後、DLAやPAC分析を用い、バイリンガルビデオレターを用いた教授法が学習者にもたらす教育効果の検証、測定を今年度後半より行っていく予定である。ただどうしても教育効果の測定は現場との信頼関係の必要な作業であるため、こちらで計画していたよりも時間がかかることがある。また、現在、研究協力者となっている高橋朋子氏が神戸の中国語母語教室と台湾の母語教室の連携を支援している。そちらの活動ともネットワークを持つこと視野に入れつつ、母語学習における効果的な教授法の提案に向けて研究と活動を深めていきたい、と考えている。
そのうえで、最終年度である来年度にはバイリンガルビデオレターを中心にしながら、ビデオレターだけにはこだわらず、年少者の母語学習のモチベーションを高める教授法に関する母語教育実践者、研究者による国際的なワークショップを開催したいと考えている。そうした成果を論文や書籍にまとめるだけでなく、ウェブサイト(http://education-motherlanguage.weebly.com/)でも公開し、SNSを活用した母語教育実践者・研究者のネットワークを作っていきたいと考えている。それにより母語学習現場への研究の還元をし、母語学習現場での効果的な教授法を確立するための研究データを蓄積する双方向的な協働モデルを提案していきたい。
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Causes of Carryover |
会議費の会場確保に考えていた費用(5000円)が無料で確保できたため2341円の残金となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度会議費の一部として使う予定。
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Remarks |
母語教育関係者への情報発信を行うWEBサイト。FACEBOOKと連動させ、多くの関係者の閲覧を得ている。
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Research Products
(6 results)