2017 Fiscal Year Research-status Report
日本語教育における反転授業の効果検証と反転授業モデルの構築
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16K02829
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
古川 智樹 関西大学, 国際部, 准教授 (60614617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手塚 まゆ子 関西大学, 国際教育センター, 留学生別科特任常勤講師 (90734260)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 反転授業 / 予習講義動画 / 文法教育 / eラーニング / 学習支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は未だ研究が進んでいない日本語教育における反転授業の有効性を検証し、反転授業学習モデルを構築することである。本年度は、昨年度に引き続き、初中級から上級の全てのクラスの文法学習において反転授業を実施し、「学習者」と「日本語教員」を対象にアンケート調査、半構造化インタビュー調査を行い、それらで得られたデータをSCAT法を用いて、それぞれの反転授業に対する評価と学習意識の変容について分析を行った。 その結果、まず学習者の反転授業に対する評価と学習意識の変容については、学習者は反転授業に対して初めは教育方法の変化による戸惑いがあるものの、徐々に能動的学習を中心とする反転授業の授業形態に慣れ、質問を持って授業に参加できる、授業での理解が促進される等、予習の重要性に気づき、さらに能動的な学習が自身の日本語能力を向上させるという学習観の変化が起こっていることがわかった。一方、日本語教員の反転授業に対する評価と学習意識の変容については、3名の教師のインタビュー調査から、反転授業実践の際には、事前知識として反転授業がどういうものであるかという認識及び理解があるか否かが、抵抗なく反転授業に入れるかどうかに影響することが窺えた。そのためには、学習者だけでなく、教師へのオリエンテーションを十分に行わなければならないこと、また、チームティーチングで行う場合は、教室内活動をどのようにしていくべきか具体的に活動内容の検討と実施案を立てておいたほうがいいこともわかった。 また、アンケート調査では、日本語学習者の学習者特性に焦点を当て、その特性が反転授業実施時に課題とする予習動画視聴及び到達度テスト等の学習成果及び反転授業評価にいかに影響を与えるのか,学習者特性の影響要因を構造方程式モデルを用いて分析を起こった結果、主に「講義動画視聴率」が「到達度テスト得点」に影響を与えていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、日本語教育において反転授業がどのように有効に機能しうるのか、反転授業未実施時と実施時の到達度確認テストの比較分析やアクセスログによる講義動画視聴率と到達度確認テストとの相関分析等の数量的分析とアンケート及び半構造化インタビューによる質的分析を行うことによって検証し、その有効性を明らかにすることである。 本年度は、調査の2年目として、上記目的を達成するために、昨年度に引き続き、初中級から上級の全てのクラスの文法学習において反転授業を実施し、学期末にアクセスログ、到達度確認テスト及びアンケート結果の数量的データを取得し、分析の精度を上げている。また、インタビュー調査に関してはデータ収集を年間を通して行い、得られたデータの文字化作業も終了し、SCAT法を用いた分析も行った。本年度は以上の調査から、当初の予定通りのデータ収集、数量的分析及び質的分析を行い、分析結果を出せていることから、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成30年度)は、これまで(平成28-29年度)に得られたデータをもとに、データの信頼性を上げるため、データ収集を引き続き行い、それらを基に分析を行っていく予定である。 具体的には、講義動画視聴率、到達度確認テスト、反転授業に関するアンケート調査による学習成果分析(量的分析)と半構造化インタビュー分析を中心にこれまでと同様に行うことによって、分析の信頼性を上げていく。特に昨年度に行った日本語学習者の個人特性が学習成果と反転授業評価に及ぼす影響については分析の精度を上げ、どのような特性が反転授業の学習成果及び評価にいかに影響を与えるのか,学習者特性の影響要因を明らかにしていく。 また、今年度(平成29年度)に行った学習者及び教員の反転授業評価とその結果を踏まえ、反転授業実施前と実施後の授業デザインの比較(インタラクションやフィードバックの時間配分の変化など)をし、インストラクショナルデザインの観点を取り入れ、モデル構築へとつなげる。そして、授業内のグループワークにおいて学習者がどのように対話を行い、学習環境を構築し、理解へとつなげているのか、エスノメソドロジー(会話分析)の視点で分析を行っていく。 以上の分析結果及び研究成果は、随時学会等で発表を行い、フィードバックを得ながら、研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに予算を執行したが、消耗品項目において一部買い控えを行ったため、次年度使用額が生じた。平成30年度の使用計画については、すでに海外での学会発表に採択されたため、次年度使用額と本年度使用額を合わせて、その旅費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)