2018 Fiscal Year Research-status Report
交換留学生は異なる文化をどのようにとらえ学んでいるか
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16K02916
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
奥村 圭子 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10377608)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 交換留学 / 異文化適応 / 認識の変容 / PAC分析 / 異文化感受性 / 文化受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の勤務大学では1990年代より協定大学との間で交換留学を実施しているが、国際感覚に優れたグローバル人材の育成が企業や社会から求められる中、教育システムの国際化に取り組んでいる。グローバル人材の育成については、これまでも政府内で様々な検討がなされてきた。1)語学力・コミュニケーション能力、2)主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感、3)異文化に対する理解と自国の人間としてのアイデンティティなどの要素や資質を併せ持つ人材であるが、2013年の教育再生実行会議の第三次提言は、「海外留学は、グローバル人材に必要とされる要件を習得するために不可欠な教育機会である」と述べている。受入れる留学生においても、派遣する留学生においても、彼らの留学の意義や留学中の異文化適応を通しての学びを実証的に検証することが、今、学生交流の促進のために喫緊の課題である。 本研究はその異文化適応の過程を検証するとともに、帰国後の円滑な再適応のため留学経験を振り返り整理し、さらに数年後に再度、ライフキャリアの観点から留学の意義を再考したい。彼らが留学先とのつながりを保ちながら、海外に目を向けた職業選択をしている場合も多い一方で、海外との接点を持ちつつ自国をもう少し知りたい、自国のために経験を活かしたいと思うケースも少なからずある。いかなる場合にも上記の1)から3)を完全ではなくとも習得し、客観的に自分と向き合い、適性や進むべき方向性に気付けるのも大きな留学の意義であると考える。 留学後の帰国生については、留学を推進する大学側としても、個人の留学体験を様々な形で発信してもらい、在学生と共有してもらい、国際交流推進の一翼を担ってほしいと願うところである。本研究課題で得る成果やデータは、新たな視点に立った留学推進のためのガイダンス、事前指導、そして留学中・後の指導に活用してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Bennett(1998)によると、文化は二つに大別され、目に見える客観文化、そして目に見えにくい主観文化に分かれる。留学において問題になることが多いのは、目に見えにくい主観文化についてであると言われるが、個人が何を文化的違いとしてとらえ、それにどのような意味づけをするか、つまりBennett (1998)の言う「異文化感受性」が重要であると思われる。異文化感受性の研究では、「異文化感受性発達モデル (The Developmental Model of Intercultural Sensitivity,DMIS)」が紹介されているが、 モデルは6つの段階から成り、大きく前半3つの段階(否定、防御、最少化)の自文化中心的段階と、後半3つの段階(受容、適応、統合)を文化相対的段階とに分けることができるという。
本研究の調査協力者である留学生によっては、自文化中心的段階から文化相対的段階に移行し、目に見えにくい主観文化について違いに苦しみ、もがき、友人関係での断絶など経ながら葛藤しながらも、最終的に違いを受容し、受け入れ、統合まではいかずとも適応する学生が少なからずいる。その一方で、目に見える客観文化について自分のできる範囲内で楽しみ、自分が受け入れられない点については不満をこぼしつつ適当にストレス・リリースを行い、見えにくい主観文化については、あまり入り込まず、違いからの防御と違いの最小化によって、ストレスを最小限度に抑えつつ、明るく留学を終え、留学先に卒業後間もなく戻っている学生も多い。これらの成果については、国内外の学会での口頭発表を通し、フロアとの意見交換を行うことができた。 2019年度には、調査協力者個人個人の二つのレアから成る異文化の学びを見ていく同時に、協力者全体の傾向から、交換留学生の異文化適応モデルが考案できないかと、分析に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記概要の目的に沿って、2019年度には以下を計画的に進めたい。 1)交換留学生の異文化適応の傾向から、適応モデルづくりを行う。 2)個人レベルのケース・スタディでは、いわゆる異文化適応のUカーブ(Lysgaard 1955)などでは表すことができない、見える文化や見えない文化の受容とそれらへの適応について、客観文化と主観文化の縦軸と適応の度合いの横軸で分析をさらに行う。 3)得られたデータや成果を活用し、新たな視点に立った留学推進のためのガイダンス、事前指導、そして留学中・後の指導に役立てる。それらについては具体的に提案を行えればと思っている。 4)上記1)から3)に関して、論文発表や口頭発表の機会を作ってゆきたい。
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Research Products
(9 results)