2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森 哲也 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (50315024)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 東大寺文書 / 東南院文書 / 東大寺 / 文書目録 / 史料学 / 古文書学 / 日本史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28(2016)年度は、まず12~14 世紀に作成された東大寺文書の目録(文書が引用、列記された問注記等を含む)の基礎的研究を行った。具体的には、記載文書の具体的な比定、論拠を伴った形でのデータの一覧表化、出納日記と合わせた文書出納の全体像の解明等であり、そのために東京大学史料編纂所、宮内庁書陵部、国立国会図書館、国立公文書館(内閣文庫)において、関係史料、写真帳その他の調査を実施するとともに、関係データ・写真版(東南院文書、東大寺成巻文書、寺外流出文書等)・図書を入手・購入し研究に活用した。 東大寺文書の点検記録・写本の調査・分析は、次年度に進める予定であったが、調査に際して合わせて対象とする方が効率的であると考えられたので、点検記録・写本の調査を一部、先行して実施し(『集古文書』『大橋長憙草稿』『諸文書部類』等)、成果の一部は、口頭報告「『諸文書部類』に見える東大寺文書」として公表している。その内容は、当該写本が学界未紹介の文書を含み、現状では乱れている文書の対応関係や、柳原紀光による『続史愚抄』編纂、東南院文書第1櫃第8巻、第9巻の現状成立過程の解明に手がかりとなることを指摘するもので、現在成稿中である。 また本年度、東京大学史料編纂所の共同研究員を委嘱され、同所の研究資源利用に便宜が与えられたことにより、計画段階では判明しなかった関係史料の存在を確認することができ、それらを含めた分析が可能になった。本研究課題の根底にある史料学、史料伝来論の深化に関わるものとして、「(書評と紹介)佐藤長門編『遣唐使と入唐僧の研究 附 校訂『入唐五家伝』」、「『入唐五家伝』の基礎的考察・補考」を公表している(前者は掲載誌の編集方針により、科研費使用の文言を入れられなかった)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度後半、調査を予定していた東大寺図書館が空調設備工事のため閲覧を停止したことは予想外の事態であったが、近年の修補に際して撮影された成巻文書のデータ入手、東京大学史料編纂所における積極的な調査等の代替手段を講じており、東大寺文書目録の基礎的研究に関しては、さらに考究するため掲載文書の比定や意義付け等について保留した部分があるものの、ほぼ予期した進捗状況である。また、次年度に具体的な調査を予定していた点検記録・写本について、効率性を考え一部、先行して調査を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究計画に基づいて、東大寺文書目録・点検記録・写本についての基礎的なデータの集成・分析を実施し、最終的な取りまとめに向けて研究を進めてゆく予定である。本年度の調査を進める中で、古書肆の販売目録中に文書出納日記等が掲載された事例を見出したので、それらへの目配りも怠らないようにしたい。
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Causes of Carryover |
本年度後半、東大寺図書館が空調設備工事を実施し閲覧を停止したため、関西方面への調査を控え代替措置を講じた影響による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に従い、適切に調査旅費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)