2016 Fiscal Year Research-status Report
戦功書上から由緒へ―兵からみる兵農分離、九州北部分散所在型武家文書を事例に
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16K03019
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
木村 直樹 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (40323662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 聡 東京大学, 史料編纂所, 助教 (20302656)
須田 牧子 東京大学, 史料編纂所, 助教 (60431798)
荒木 裕行 東京大学, 史料編纂所, 助教 (70431799)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 兵農分離 / 島原の乱 / 牢人 / 家臣団 / 転封 / 在地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、中近世移行期に九州北部で活動した武家を分析対象として、兵農分離の意義を武士の側の変容の視点から検討している。特に、佐賀鍋島家や対馬宗家のように旧族居付系の大名と、熊本細川家のような近世になって遠隔地から転封する過程で、中世の在地の系譜をひく武士と、まったく土地に関係なく家臣団に組み込まれていく武士との差異を検討することが重要だと考えている。 平成28年度は、研究開始の初年度であり、また本科研が当初から目的の一つとして考えていた豊後肥後エリアが熊本大地震による影響で調査が難しかったことから、研究2年次以降に予定していた長崎・福岡県下や、順次再開された所蔵機関などの調査を先にすすめ、またデータの蓄積に重点をおいた。調査は、大分・長崎・福岡の各地で行い、必要な史料については、デジタル撮影を行った。撮影の成果は今後公開する方向で検討を行っている。 その成果として、分担者による調査の経過についての報告を行った。また、研究代表者の著作において、幕府直轄地である近世都市長崎では、中世の武士たちの末裔などがどのように流れ込んでいったのか、また近世的な支配体制のもとで、周辺の藩の武士たちがどのように組織化され、長崎との関係ももつことになったのか、一定の見通しをえることができた。 特に、島原の乱に参加した牢人の軍功と再仕官との関係性を数量的にまたいくつかの武士の詳細な事例から確認する中で、軍功の承認という武士の本源的な行為について、中近世との違いを確認することができた。この点については、平成29年度末に公刊する予定の論集に収録されることとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熊本地震の影響により、平成28年度予定していた熊本や大分県下の調査地を変更することとなった。また長崎県立対馬歴史民俗資料館の調査も、同館が平成29年度から当面改装のため休館となることが発表されたため、前倒して調査する必要が生じた。そのため当初は平成29・30年度に予定していた、長崎・福岡や大分県下の一部の地域の調査を行ったため、若干準備が遅れてしまったが、一方で、既に複製データや既刊史料集などからのデータ抽出作業などを通じて、平成29年度以降の調査や研究成果の発表の準備は整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度前半は、平成28年度に予定していた調査、また近世初期の武士の仕官についてのデータ蓄積をすすめる。 その上で、平成29年度後半には、科研メンバーによる研究会を実施し、武士の兵農分離についての理解の共有を図ることを目指したい。
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Causes of Carryover |
熊本地震により、調査予定地で平成28年度は史料の調査ができなかったことと、研究協力者である九州北部の学芸員など文化財行政担当者との会合が開催できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定を一年延し、平成29年度後半に研究会を開催し、また平成28年度にできなかった調査についても多くの史料所蔵機関の閲覧が再開してきたので、実施したい。
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Research Products
(8 results)