2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03083
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂尻 彰宏 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (30512933)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 敦煌石窟 / 供養人像 / 楡林窟 / 莫高窟 / 現地調査 / 調査指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの敦煌石窟調査の際の経験を基に、供養人像を分析するための指標作りに着手した。今年度の実績は、供養人像の要素の抽出と整理、石窟調査による確認である。 まず、分析の対象としたのは、主に楡林窟の帰義軍期(9世紀後半~11 世紀初)、ウイグル期(11 世紀初~中)、西夏期(11 世紀中~13 世紀)の石窟に描かれた供養人像である。楡林窟は、全400 窟以上におよぶ莫高窟に比べ、全42 窟とコンパクトにまとまっており、時代も10 世紀頃から13 世紀頃までにほぼ集中しているので、この間の全体像を把握しやすい特徴がある。そこで、本年度は主に楡林窟の第12窟、第16窟、第25窟、第32窟、第34窟、第36窟、第40窟の7窟の151身の供養人像について、既存の調査報告書や研究代表者・連携研究者のこれまでの石窟調査におけるスケッチやメモなどの記録をまとめ直し、供養人像の大きさ、石窟内の位置、像の向いている方向、衣服(色・デザイン)、持ち物(香炉・笏など手持ちの道具)、装飾(装身具など)などチェック項目をリストアップし、統一した方法で記録できるよう整理した。 次に、上記の方法で整理した記録を現地調査に持参し、実際の石窟で確認を行った。まず、楡林窟において供養人像の石窟内での位置、各供養人像の位置関係、衣服・持ち物などの描写について実見に基づいて情報を補った。この現地調査の結果をもとに、次年度以降の現地調査に反映すべく指標の改善を行った。なお、現地調査では、楡林窟のみならず、敦煌・莫高窟の関連する石窟も同じ指標で調査し、その結果を踏まえて指標がより普遍的で汎用性のあるものになるよう調整した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究では、研究代表者と連携研究者とによるこれまでの石窟調査記録の整理と具体的なチェック項目の抽出と指標作りについては、概ね目標を達成することができた。また、現地調査においても予定していたほぼ全ての石窟を調査することができた。これにより、記録の検証やそれに基づいた指標の改善も行うことができた。ただし、本年度の現地調査の際には、本研究の連携研究者が止むを得ない理由により調査に参加できず、調査の範囲を縮小せざるを得なかった。そのため、研究期間中に予定している石窟調査全体の規模に照らせばやや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究で得られた指標をこれまでの観察記録に当てはめ、供養人像の記録を統一した方法で叙述する作業に本格的に着手する。代表者・連携研究者間の記録を摺り合わせた上で、石窟ごとに分担して指標に沿った叙述を行う。さらに、この作業により作成された叙述を現地調査によって再度確認する。これにより情報の精度を高めるとともに、指標やそれに基づいた叙述の改善を進めていく。
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Causes of Carryover |
本研究の3名の連携研究者が、止むを得ない理由により、平成28年末に行った現地調査に参加できなかった。そのため、海外旅費と調査に必要な車両借り上げ費用やガイド代などのその他経費を合わせた3名分の費用である約95万円を使用することができなかった。また、本研究遂行のため現地調査の際に石窟の供養人像の写真撮影を現地の研究機関に依頼した。この写真撮影の費用は約12万円であったが、先方の機関側の事情により、支払いと写真の入手が平成29年4月以降になったため、年度中の支払いはできなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、研究代表者と連携研究者3名を合わせた4名全員が、現地調査を行うことが確定しており、前年度に調査できなかった石窟の調査を進めるために、調査期間を延長して調査を行う計画である。この延長により、前年度未使用の資金の使用が見込まれる。また、前年度に依頼した石窟の供養人像写真の入手のための手続きは既に完了しているので、平成29年度中の費用の使用は確実に行うことができる見込みである。さらに、平成29年度の調査においては、写真撮影をより範囲を広げて行う予定なので、このための費用として使用する予定もすでに立っている。さらに、可能であれば、中国での現地調査以外に海外の博物館・美術館等に所蔵されている供養人図像の調査も行う予定なので、そのための旅費としての使用も見込まれる。
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