2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03083
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂尻 彰宏 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (30512933)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 敦煌石窟 / 供養人像 / 楡林窟 / 莫高窟 / 現地調査 / 調査指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、敦煌石窟の供養人像を分析するための指標の整理を継続し、観察記録の一部を公表した。昨年の中国・甘粛省・楡林窟における石窟調査をもとに、楡林窟第12窟、第16窟、第25窟、第34窟、第36窟、第40窟の合計7窟の供養人像151身を性別、配列、方向、衣服(色・デザイン)、持ち物(香炉・笏などの手持ち道具)、装飾(装身具など)などの本研究で整理した指標に基づいて記録し、「楡林窟供養人叙録選注」として公表した。 次に、敦煌石窟の現地調査を継続し、石窟と供養人像の観察を進めた。楡林窟においては、上述の「楡林窟供養人叙録選注」に未収録の第19窟、第20窟、第32窟、第35窟、第38窟の供養人像の調査と関連する銘文の調査を行った。これらの石窟は供養人像が非常に多く、すべての調査を終えることはできなかったが、最終的な記録を作成するための準備は終えることができた。銘文についても現地の関係者の協力をえて、詳細に観察を行うことができた。なお、現地調査では、敦煌・莫高窟でも同じ指標で調査を進め、その結果を踏まえて指標がより普遍的で汎用性の高いものになるよう調整した。 さらに、石窟を管理する敦煌研究院の関係者の協力を得て、これまで記録のなかった供養人像の写真撮影を行った。石窟内の撮影には技術上、保存上の困難が伴うが、交渉の結果、貴重な資料を得る道筋をつけることができた。また、保存上の理由で開放されていなかったいくつかの石窟の調査も特別に行うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、研究代表者と連携研究者によるこれまでの石窟調査記録の整理と具体的な指標作りについて、概ね目標を達成し、成果の一部を公表することができた。また、現地調査においても予定していたほぼすべての石窟を調査することができた。これにより、指標に基づいた観察や記録に一定の見通しを得ることができた。また、現地の関係者の協力も得て、供養人像の写真撮影や未開放石窟の調査も進めることができた。したがって、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究で得られた成果を活用して、敦煌石窟の供養人像の記録を統一した方法で行い、観察内容を叙述する作業を継続し、平成29年度に公表した楡林窟の供養人像の観察記録の追補を行う。すでに、平成29年度の現地調査で一次的な調査は終えているので、観察記録を整理した上で、平成30年度の現地調査によって再度調査・確認を行い、楡林窟の5つの石窟(第19窟、第20窟、第32窟、第35窟、第38窟)の記録をまとめる。また、莫高窟の調査も継続し、同じ指標で整理し、観察記録の叙述を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)まず、本研究の連携研究者のうち1名がやむを得ない理由により、平成29年末に行った現地での石窟調査に参加できなかった。そのため、海外旅費と調査に必要な車両の借り上げ費用やガイド代などのその他経費を使用することができなかった。また、調査の期間を石窟を管理する敦煌研究院の事情で、やや短縮する必要があり、その分の旅費も使用することができなかった。さらに、石窟の写真撮影に関わる費用についても、石窟を管理する敦煌研究院の事情により処理が遅れ、平成29年度中の処理ができなかった。 (使用計画)平成30年度は、研究代表者と連携研究者3名を合わせた4名全員の現地調査が決定しており、前年度より調査期間も延長して調査する予定である。また、引き続き石窟の写真撮影もより範囲を広げて行う予定なので、このための費用として使用するめども立っている。さらに、本研究の研究成果の報告のため、研究代表者と連携研究者2名の合計3名で、海外の学会で発表する予定があり、そのための海外旅費として使用することも見込んでいる。
|
Research Products
(10 results)