2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03094
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 昭一 東北学院大学, 文学部, 教授 (70182920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 勝彦 明治大学, 商学部, 教授 (10201849)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 南アジアの冷戦 / 国際援助 / 軍事援助 / 経済開発援助 / 武器移転 / インド / パキスタン / イギリスの影響力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南アジアにおける冷戦構造について、研究史上希薄である経済援助と軍事援助の両面的視角から、戦後から1970年代初頭までのインド及びパキスタンをめぐる国際援助と南アジア地域秩序の再編過程を一次史料にもとづいて検討することを課題としている。イギリス帝国の脱植民地化とアジアにおける冷戦体制の成立が同時進行していく過程について、これまでイギリスからアメリカへのヘゲモニー移転問題ならびに国際援助、特にコロンボ・プランによる開発援助問題を検討してきたが、引き続き戦後アジアの国際秩序の再編問題を究明する一環として、本研究では南アジアに焦点を絞り、経済援助と軍事援助の両面から国際援助がもたらす南アジアの秩序再編とアジアの自立化への動きを検討する。 これまでこうした問題については日本内外において研究が多数存在するものの、ほとんどが個別分野における現状分析か評論にとどまり、経済援助および軍事援助両面から20世紀の国際秩序再編過程の中に位置づけた研究は極めて少ないため、アジア冷戦体制における欧米の実効支配と南アジア地域の政治・経済的自立の歴史的背景の解明は不十分なままになっている。本研究では、南アジアの冷戦という視角から、共産国の動向を関連させつつ特にイギリス及びアメリカの経済援助と軍事援助の実態とインドの軍事態勢の自立化の関連を明らかにすることをめざしている。 そこで、当該年度は、国際経済援助研究の成果をまとめつつ、これまで地域紛争の観点から限定的に取り上げられてきた南アジアの軍事研究の整理を行なった。特に邦語文献と二次文献の整理をおこないつつ、さらには海外のアーカイブで一次資料の調査・収集にあたり、経済援助のみならず軍事援助について、援助国の思惑のみならず印パ両国の巧みな受入れ戦略に関する研究の現状と課題追及のための基本的史料を入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の前半において、4月に早速明治大学で研究分担者と研究課題と役割分担を確認した。これまでの基盤研究で得た国際的な経済援助の概要をまず再確認し共有する作業を行いつつ、各自の最終研究課題とその年次ごとの目標、特に経済援助と軍事援助の資料の存在形態の確認と収集に努めることを確認した。 前半において、代表者は、1960年代の国際援助とインド開発の関係について、分担研究者は、ソ連の援助とインド国内の産業基盤の形成、さらには高等教育との関連をまとめた。 後半においては、これまで収集してきたイギリス公文書館などの国外の一次史料のデータベース化する作業を行うとともに、邦語資料の収集とその内容を整理し、研究の現状を確認できた。これまで経済援助を中心に収集してきたが、軍事援助関連の史料へと移行した。11月には明治大学で開催された武器移転シンポジウムに参加し、海外の軍事研究に関する情報を得、2017年2月には仙台でこれまでの研究成果を確認した。さらに、2017年1月と3月には、ロンドンの公文書館でインドおよびパキスタンの軍事関連の一次史料を収集した。また、分担研究者は、12月末にインドの実情を確認するために、ニューデリーの航空博物館とバンガロールの航空博物館に出かけ情報収集を行うともに3月にはイギリス湖文書館で一次史料の収集にあたった。 その間、海外研究者とは、メール等を利用し情報交換を行ない、協力体制を深めた。定期的に研究分担者や研究協力者との情報交換を行いながら国内の研究会においても積極的に参加して、研究課題について批判検討を行った。当該年度は、研究動向を確認し、基本的な一次史料を収集できた。これまでの成果を確認しながら今後の研究の基盤づくりをすることができたという点で、ほぼ順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に示した研究課題を平成29年度以降も引き続き追究することになるが、経済援助と軍事援助の関連をキーワードにして、可能な限り継続して公文書館での史料調査・収集にあたるとともに、研究成果の一部を公表し、本研究課題の遂行に伴って生じる新たな課題に対して、分担研究者との議論を重ねていく。 6月に刊行される編著『冷戦変容期の国際開発援助とアジア』(ミネルヴァ書房)の成果についての客観的評価と本研究の課題との関連を再確認する。また、6月27日には明治大学で開かれるシンポジウムで成果の一部を発表して、そこで得られた情報を今後の研究に生かす。そして、今年度の研究成果を確認するために、9月末か10月初めに仙台で研究会を開催する。 さらに、研究課題を追及するのに必要な一次史料の調査及び収集のため、今年度もイギリスの公文書館に出かける予定でいる。今回は、特に1950年代~1960年代のパキスタンの軍事援助に関する史料について調査収集する。 なお、アジア国際秩序の再編に関する副次的課題の設定が必要になった場合には、研究協力者として該当者の追加的参加を求めて、本研究課題の達成度を高める。
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Causes of Carryover |
海外での史料調査収集費用として予定した経費について、学内経費など他の資金を利用することができたことによって当該補助金で予定していた分を利用しなくても済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した分については、海外での資料調査収集費用と新たな情報をえるために必要な図書経費などに利用する予定でいる。
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