2016 Fiscal Year Research-status Report
20世紀初頭のロシアにおける国内移住と入植事業に関する研究
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16K03109
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
青木 恭子 富山大学, 人文学部, 准教授 (10313579)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移住政策 / 自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20 世紀最初の20 年間を中心に、アジアロシア移住・入植事業を帝政末期のロシアが描いていた国家構想の一環として位置づけるとともに、1917 年革命前後の連続性と断絶という視点から、農民の国内移住の実態について分析するものである。研究初年度に当たる平成28年度は、1906 年立憲体制下の新たな国家構想および移住・入植政策の新たな方向性に関する考察に向けて、必要な資料を収集するために約2週間の外国出張を実施し、ロシア国立歴史文書館(サンクトペテルブルク市)を中心に、帝政ロシア政府の移住・入植政策に関連する行政文書や報告書などの資料を閲覧・収集した。 自由主義的改革という視点で移住政策の変遷を見るならば、1906年立憲体制下で準備されていた新たな移住・入植事業関連政策の基本構想の大半は、四半世紀前の1880年代初頭の段階で既に提言されていたことがわかる。ここで鍵となるのが、ブンゲという人物である。彼は、かつては農奴解放令を準備する法典編纂委員会のメンバーでもあり、1881年から1886年まで財務大臣として自由主義的な改革構想を打ち出し(但し保守派の根強い抵抗に遭った)、1893年から1895年に亡くなるまでシベリア鉄道委員会副委員長としてシベリア移住・入植事業の推進に尽力した。その思想は、のちのヴィッテやストルィピンの改革構想にも大きな影響を及ぼし、改革の基盤を作ったとも言われている。以上のことからも、「大改革」以来のロシア自由主義および自由主義的改革の流れに位置づけて、帝政ロシア最晩年の移住・入植事業構想を考察する必要があることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出張時に使用するノートパソコンを新たに購入する必要が急遽生じたため、やむなく初年度購入を計画していたマイクロ資料『ソ連中央統計局報告集 1920-1927 年国勢調査報告集』の購入を見送った。そのため、『1897 年第1 回ロシア帝国国勢調査』データとの比較によって20世紀最初の20年間の人口移動の様相を分析することには、未だ着手できていない。 この点を除けば、公刊・未公刊資料の収集などはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も現地文書館・図書館での資料収集を継続しながら、(1)1906 年立憲体制下で実現が目指されていた帝政ロシアの新たな国家構想との関連における移住・入植政策の新たな方向性に関する考察、(2)帝政末期から1920 年代までのアジアロシア移住の動向および移住農民の新天地への定着に関する考察、(3)第一次世界大戦とロシア革命の前後におけるアジアロシア移住・入植事業の連続性と断絶の問題の分析、という3つの課題に順次取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
当初計画では『ソ連中央統計局報告集』(41万円)を物品費から購入する予定だったが、出張時に使用するノートパソコンの更新および文書撮影用デジタルカメラの購入を優先したため(計33万円)、その差額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も資料収集のための外国出張を計画しており、航空運賃は毎年の変動も大きいため、合算して出張旅費として使用する計画である。
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