2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mediterranean Intellectuals Editing of Byzantine Anthology
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16K03118
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
草生 久嗣 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (10614472)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 西洋中世史 / ビザンツ / 異端 / 校訂 / アルメニア / 正教会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、成果発表を重視した。個別成果の発信に努め、国際学会(米国Byzantine Studies Conference)での報告、英文共著書(Radical Traditionalism)の出版、英文査読国際誌への共著論文の発表、国内全国誌への論文(『西洋中世学研究』誌)発表を行っている。これらは、総合成果として当初予定されていた校本テキスト編纂作業の優先順位を入れ替えて行われたものである。ただしこの結果、研究予定にない形での大きな成果として、査読国際誌(Revue d'Histoire des Textes誌)に共著論文を発表でき、本研究の存在を知らしめるに至った。 これらはビザンツ帝国の神学アンソロジーである『ドグマティケー・パノプリア』(現在まで学術校訂の刊行なし)について、その校本の情報整理の過程で、テキスト本文の分析から学術的発見を果たし、その都度に報告を行ったものである。とくに「パウリキアノイ」章にまつわる分析は、その異端者集団の歴史的意義を問い直す論考に結実した。従来研究者が同異端集団を「中世の二元論異端」ととらえてきた根拠に、修辞上のアナクロニズムを指摘し、むしろ同時代においては、教義論上の「異端(heresy)」とするよりも、セクト・カルト・ミリシアとしての活動相に着目すべき必要性を論じている。 ただし、こうした成果とそれに対する反響は、当初計画において予定されていた総合成果としての校訂本の出版計画に見直しを強いることにもなった。それについては国際学会の場で指導的な立場の研究者集団より、具体的な改善のアドヴァイスを受けたことが大きい。また調査費および作業コストの高騰も影響を及ぼした。この校本研究は今なお果たされていない国際学界の課題であり、今後も国際的連携も視野に入れつつ取り組むべき、将来的課題と位置付けられる。
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