2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03174
|
Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
飯島 武次 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (90106641)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角道 亮介 駒澤大学, 文学部, 講師 (00735227)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 秦 / 大堡子山遺跡 / 秦邑 / 雍城 / 秦公1号墓 / 東陵 / 咸陽 / 襄公 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国甘粛省東部から陝西省の渭河両岸に分布する早期秦文化の遺跡・遺物および春秋戦国時代秦国の遺跡・遺物、統一秦時代の遺跡・遺物の考古学的調査と研究を行うことが当該研究の研究目的であるが、その研究目的に従って2017年度も、北京大学考古文博学院と当該研究を課題とした学術交流を行い、陝西省内の西周時代及び併存期の秦人遺跡の発掘に参加し、また春秋戦国時代・統一秦時代の秦国大型墓の踏査を行った。 2017年9月4から7日の4日間、研究代表者飯島武次は北海道にある東京大学大学院人文社会系研究科付属北海文化常呂実習施設に於て行われた北京大学考古文博学院の発掘実習に出向き徐天進教授と秦文化成立問題に関わる研究交流を行った。 2017年9月22日から9月28日の7日間、研究代表者飯島武次、研究分担者角道亮介、研究協力者大日方一郎は、北京において北京大学考古文博学院と当該研究の打ち合わせを行った後、甘粛省礼県の春秋時代初頭の大堡子山遺跡の踏査と、張家川回族自治県の馬家原遺跡発掘見学を行った。あわせて天水市博物館で開催されていた「西戎文化的発現与研究学術研討会」に出席した。 2017年10月11日から10月21日の11日間、研究代表者飯島武次、研究分担者角道亮介、研究協力者大方日一郎は、中国宝鷄市扶風県召陳村の西周時代・春秋時代遺跡の発掘調査に参加した。発掘終了後、咸陽市の秦武王陵の踏査と、西安市臨潼区秦東陵の踏査を行った。 以上の研究結果として、発掘調査では周人の支配下にある秦人の存在を遺構と遺物の上から推定することが可能となってきた。また踏査では、大堡子山遺跡3号・2号墓が、各説在る中で、3号墓が秦襄公墓、2号墓が襄公妃墓である可能性を確信した。また雍城14号陵園M45号墓が秦穆公の墓であるとの仮説を持つに到った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年4月に「今後の研究の推進方策等」として予定した研究活動をおおむね予定通り完了することができた。8月上旬としていた早期秦関係遺跡発掘調査の打ち合わせは9月22日からになったが、北京における北京大学考古文博学院との発掘調査の打ち合わせの後、甘粛省に入り甘粛省文物考古研究所・天水市博物館の全面的な支援を受けて、早期秦の大堡子山遺跡・円頂山遺跡・平山遺跡の踏査を行い、その後西戎墓地群とされる馬家原遺跡の踏査と、現在行われている発掘を見学することができた。また早前期秦文化または西周文化関係遺跡の中国側の発掘調査には、10月に陝西省扶風県召陳遺跡において参加することが出来、その時期の大型建築遺構を検出した。10月の発掘参加終了後、咸陽市の秦武王陵と武王妃陵の踏査と秦咸陽時代の秦東陵の踏査を行い、東陵においては始皇帝の曾祖父昭襄王・父親荘襄王時代の陵墓の存在位置を確認し、大規模な版築遺構を検出することが出来た。 大堡子山遺跡の南北に配列された2基の中字型墓の被葬者に関しては各説があるが、秦襄公を西垂に葬ったとの古典記載の他に、大堡子山大型墓から出土した青銅鼎など礼器が西周末・春秋初頭の遺物で、銘に「秦公」とあって、秦公が諡で秦の国君に「秦公」を用いるのは第1代襄公からである事からM3号墓の墓主は襄公、M2号墓に関しては山西省曲村の晋侯墓地の例などからM1号墓に並行して並ぶM2号墓の墓主は襄公妃である可能性が高いとの結論を出した。M2号墓の南西の楽器坑で発掘された青銅釣鐘の銘にある「秦子」は襄公の子である文公を示すとの結論を得ることが出来た。秦建国当時の大堡子山遺跡の墓に対して複数の説がある中で、この様な結論を導き出したことは、この研究が、「おおむね順調に進展している」あかしになりうると思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、9月中旬から約15日間の予定で、研究代表者飯島武次、研究分担者角道亮介、研究協力者大日方一郎が、北京大学考古文博学院・陝西省考古研究院が主体者となって行う秦都雍城遺跡の発掘調査に参加する予定を立てている。秦都雍城外南東に存在する14号秦公陵園のM45号墓を秦9代の穆公墓とする仮説を持っているが、発掘期間中に、この件の確証を出したい。また咸陽市周陵鎮の南西には漢成帝の延陵が破壊している秦陵が存在し、その実態を踏査したい。 研究代表者飯島武次が四川省成都の四川大学で開催される10月21・22日の「中国考古学論壇」に参加し、続いて開催される23~25日の「中国考古学会大会」で「関于大堡子山秦公1号墓和2号墓的墓主」の題での発表を予定している。そこでM3号墓の墓主は襄公、M2号墓の墓主は襄公妃で、M2号墓の南西の楽器坑で発掘された秦子釣鐘の銘にある「秦子」は子の文公を示すとする、われわれ(研究代表者飯島武次・分担者角道亮介・協力者大日方一郎)の結論を、各説の中で最も合理的であると考えを述べる。 2018年度は当該研究の最終年度なので室内作業としての研究とりまとめ作業にも重点を置く。当該研究のとりまとめを行い、当該研究報告の原稿を完成させ、出版経費が取得できれば次年度以降の出版へ持っていきたい。また次年度以降も科学研究費による当該研究の継続を予定しているので、徐天進(北京大学考古文博学院教授)、趙化成(北京大学考古文博学院教授)、焦南峰(前陝西省考古研究院長)、王輝(甘粛省考古研究所長)等との研究連絡を密にして2019年度以後に繋げていく予定である。これらの研究者と2019年度以降の研究計画に関して、四川省成都で開催される「中国考古学論壇」および「中国考古学会大会」の場において協力を仰ぐ予定である。
|