2016 Fiscal Year Research-status Report
山岳霊場・信仰遺跡における空間構造の復元的研究-豊前等覚寺を事例に-
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16K03180
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Research Institution | Kyushu Historical Museum |
Principal Investigator |
岡寺 良 九州歴史資料館, 学芸調査室, 研究員(移行) (70543693)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 山岳信仰・霊場遺跡 / 豊前等覚寺 / 修験 / 青龍窟 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に実施した研究の成果については以下のとおりである。 <調査内容> ①普智山等覚寺(白山多賀神社)に関連の深い宿とされる内尾薬師、青龍窟の実地調査、②普智山等覚寺(白山多賀神社)にて行われる松会の祭礼調査、③東京国立博物館における関連資料調査、④等覚寺との比較検討のため、関連遺跡調査として、大分県宇佐市の龍岩寺の奥の院の窟の実地調査、羽黒修験の本拠である山形県出羽三山(羽黒山、湯殿山、月山)の実地調査、山形県山寺の実地調査、⑤関連学会の参加として、第42回日本洞窟学会平尾台大会、第6回九州山岳霊場遺跡研究会「多良岳と山麓の霊場遺跡」への参加、について行った。 特に①については、内尾薬師における2つの窟の実測作業から、上の窟では薬師を祀り、下の窟では龍神を祭るという陰陽一対のものであることが推測され、等覚寺に関連する重要な聖地・霊場であることがわかり、中世の銅銭を採集したことから、その時代まで遡ることが推測された。また、青龍窟における実測作業は、現在も調査継続中であるが、現在の信仰軸(礼拝方向)とは異なり、中世段階においては豊玉姫の磐座と竜神の磐座が両者一対で信仰の対象として見立てられていたことが推測された。また、青龍窟内部の十六羅漢、四天王、推定普賢菩薩の石造物の調査も調査を行っている(継続中)。 <研究成果の公表> 普智山等覚寺の所在する苅田町において等覚寺についての招待講演(豊前の戦国城郭と等覚寺城)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的には、予定通りの行程をこなしている。ただし、予想以上におのおのの遺跡における所見が多く、予定以上に調査回数を重ねているのが現状である。また、次年度以降も想定以上のものが見られた場合には、調査回数を増やすことで対処したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度については現在行っている青龍窟の調査を継続して完成させる。また、等覚寺集落の坊院群・墓地群の現地調査を行い、豊前等覚寺境内の平面構造の調査データの作成・把握に努める。また、山麓~等覚寺~青龍窟の間に所在する山伏古道や滝などの行場の修験関連遺跡をGPS携帯による現地調査を行うと共に、等覚寺に関連した入峰宿のうち、未調査である龍が鼻、胸の観音、普智窟、不動窟、塔ヶ峰などについての現地調査を行い、位置データを取得すると共に必要に応じて測量調査を行う。また、それぞれ重要地点からの航空写真撮影を行い、そこから見える景観について調べることで、信仰の軸線を推測する。 平成30年度においては、青龍窟内部の三次元計測を行い、青龍窟内部における信仰空間の空間復元を試みる。また、過去に行われた青龍窟の発掘調査成果を再検討し、特に遺物については未報告のものを中心に再計測、実測等の作業も行う。 個別事例の調査において、想定以上の成果が上がった場合は、当初の想定よりも調査時間が余計に係ることが想定されるため、さらに回数を増やして調査を行う党の措置をとる予定である。
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Causes of Carryover |
研究に必要な消耗品等が想定ほど必要ではなかったため、若干の予算残が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査の進展に応じて、実測調査等に必要な消耗品を購入する。
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