2017 Fiscal Year Research-status Report
山岳霊場・信仰遺跡における空間構造の復元的研究-豊前等覚寺を事例に-
Project/Area Number |
16K03180
|
Research Institution | Kyushu Historical Museum |
Principal Investigator |
岡寺 良 九州歴史資料館, 学芸調査室, 研究員(移行) (70543693)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 山岳信仰・霊場遺跡 / 山岳修験 / 航空撮影 / 三次元計測 / 過去の調査の再確認 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、主に等覚寺周辺の山岳修験にかかわる行場・宿と伝えられる場所の確認と、確認したもののうち、遺構が確認できたものについて、実測作業等の詳細な調査を行った。 調査を行ったのは、胸の観音(みやこ町)・千仏窟(行橋市)・龍地窟(みやこ町)などである。 また、遠景等を撮影するため、無人航空機(ドローン・DJI Phantom 4 Pro)を導入し、白山多賀神社周辺、青龍窟、鬼の唐手岩、天狗岩、内尾薬師、千仏窟などの空撮を実施した。これにより、これまで樹木等により視界をさえぎられていたために、よくわからなかった遺跡同士の位置関係を視覚的にとらえることができ、大きな成果を上げた。また、三次元計測のため、Photo Scanを導入し、これらの宿や行場の三次元計測のためのデータ作成を本年度より始めているが、まだ試行錯誤段階である。 さらに、過去に苅田町教育委員会で発掘調査がなされた白山多賀神社、青龍窟、鳥居口遺跡、山口遺跡、谷遺跡の出土遺物を改めて再確認する作業を行った。報告されていない遺物の中には非常に重要なものもみられ、中でも鳥居口遺跡からは8~9世紀代の製塩土器の破片が確認された。古代の山岳信仰において製塩土器が使用された祭祀遺跡は、国家的祭祀が行われたとする福岡県太宰府市の宝満山遺跡群しかなく、非常に希少で重要な事例が確認できたといえよう。 また、本研究への参考とするため、関連遺跡として、相模大山、英彦山を現地踏査すると共に、日本山岳修験学会、九州山岳霊場遺跡研究会などの関連学会に参画し、研究に資する新たな知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた調査遺跡を実際に確認していくと、測量など、詳細な調査を要する遺跡が想定以上に多く、予定遺跡の調査はすべては完了していない。また、これらの遺跡は遺構の読み込みを行うのは、山岳信仰・霊場遺跡という自然崇拝に基づく非常に特殊な遺跡であることから、専門性を持った研究者の協力なしに行うことは難しい。そのため、その都度遠方から研究者を招聘して共同で調査を実施しているため、日程調整をはかるのが困難であると共に、調査の進捗も天候に左右されることが多い。しかし、研究自体にさほどの遅延は認められないし、当初想定していた以上の重要な知見が得られているため、研究の内容としては非常に充実した内容となってきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
やや遅れている状況であるため、当初の予定よりも調査回数・日数を増やすことで、当初予定の成果を出すことを目指す。 内容としては、昨年度まで行っていた現地確認・詳細調査を基本とし、修行窟などの二次元で表すには非常に難しい遺跡をいくつか抽出したうえで、三次元計測を行う。 また、当研究の成果の披露として、展覧会、シンポジウムを実施する。
|
Causes of Carryover |
最終年度に研究成果を公表するため、展覧会を実施するとともに、研究報告書を刊行する予定となっている。それらを実施するためには、最終年度に配当される研究費のみでは賄いきれないため、次年度使用額を生じさせることで賄おうとしたため。
|
Research Products
(4 results)