2016 Fiscal Year Research-status Report
イギリス憲法における議院内閣制の立憲主義的解釈について
Project/Area Number |
16K03287
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
成澤 孝人 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (40390075)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 議院内閣制 / 国会主権 / 政治的立憲主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年5月8日、中京大学でおこなわれた憲法理論研究会2016年5月春季研究総会において、「イギリスにおける不文の立憲主義」というテーマで報告する機会に恵まれた。報告においては、イギリス憲法学において、国会の内閣に対する統制を立憲主義として理論化する「政治的立憲主義」が注目されていることを紹介するとともに、イギリスの議院内閣制が、17世紀に成立した国会主権の構造と密接に結びついていることを確認した。この研究成果は、成澤「イギリス憲法における政治的立憲主義者の格闘」憲法理論研究会編『対話的憲法理論の展開』(2016年、敬文堂)として発表された。 さらに、平成28年6月4日、関西学院大学でおこなわれた比較法学会第79回総会でのミニ・シンポジウム「イギリスにおける憲法改革の行方」において報告する機会に恵まれた。この報告においては、イギリス議院内閣制の淵源を国会による国王大権の統制に見出し、それが、政党政治の確立とともに内閣統治制へと変容していくが、ブレア政権下の庶民院改革を通じて議員の独立性が高まったこともあり、2010年選挙による保守党と自民党の連立政権においては、国会優位の議院内閣制という現象が明らかにみられることを指摘した。本報告の内容は、「イギリス憲法改革と議院内閣制の現在」として、比較法研究78号(2016)に発表された。 平成28年度は、イギリスにおける議院内閣制の成立過程と展開に関する研究図書、また、2010年-2015年の保守党と自民党の連立政権に関する研究図書を購入し、それを利用して研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、二つの研究会での研究報告を通じて、イギリスにおける議院内閣制の立憲主義モデルについて概要を示すことができた。平成29年度は、平成28年度に得られた研究成果をさらに理論的に整理し、発表することを予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、国王大権が議院内閣制へと転化していく過程を検証する予定である。また、議院内閣制の立憲主義モデルについて、基本的な理論を提示する予定である。ただ、イギリスへの現地調査については、平成30年度に変更したい。その理由は、平成29年9月、京都でおこなわれるイギリス憲法研究会主催の日英セミナーのために、K.ユーイング教授、M.ゴードン教授が来日する予定であり、この二人の研究者に、本研究の対象であるイギリス議院内閣制の立憲主義モデルについて意見を聞く機会があるからである。平成29年度、研究成果を出したのち、平成30年度、改めてイギリス現地調査をおこないたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
当初見込んだよりも安価に遂行できたため、若干の残金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
92円は、平成29年度請求額とあわせて、文房具等の購入にあてたい。
|