2018 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluating The U.K. Cabinet Government System: A Japanese Constitutional Lawyer's Perspective
Project/Area Number |
16K03287
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
成澤 孝人 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (40390075)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 立憲主義 / 国会 / イギリス憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年9月6日に、リバプール大学でおこなわれた第6回日英比較憲法セミナーにおいて、Japanese Constitutionalism and the Pacifism of the Japanese Constitution として、報告をおこなった。この報告は、本研究の結果得た議院内閣制の理解を前提として、それを戦後日本の憲法実践にあてはめたものである。 また、リバプール大学のMichael Gordon 教授にインタビューをおこない、イギリス憲法における国会主権論と大臣責任制の関係について、重要な示唆を得た。また、シェフィールド大学のGraham Gee 教授にインタビューをおこない、政治的立憲主義論がイギリス憲法に与えた重要なインパクトについて確認することができた。 本研究の目的は、イギリス憲法の本質は、国会による行政権のコントロールにあり、政権交代もその側面から理解する必要があるということである。イギリスの憲法学者と交流することによって、この視角の有効性について再確認することができた。 90年代の日本の改革は、行政権の強化と二大政党制を「イギリス型」として、目標にしてきた。しかし、イギリスの憲法学は、首相のリーダーシップによる行政権の強化を「選挙独裁」として批判してきたのである。本研究が注目したいのは、「選挙独裁」が指摘されていた当時においても、チェック機関としての国会が機能していたという事実である。国会による内閣の統制は、国会が内閣に優位するという憲法構造から導かれるものであり、そこに、イギリス憲法の核心部分を見出すべきである。この研究成果について、本年中に発表する予定である。 なお、議院内閣制の立憲主義的モデルから導かれる国王大権のあり方という視点から、日本の天皇の代替わりについても、重要な視角を得ることができた。本研究の派生的成果として位置づけたい。
|