2018 Fiscal Year Research-status Report
近時の公物紛争に関する行政法的視点からの総合的研究
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16K03305
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
首藤 重幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00135097)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 所有者不明土地 / 円滑法 / 戸籍調査 / 相続登記未了土地 / 世田谷区二線引畦畔事件 / 金沢市庁舎前広場事件 / 条例改正 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究課題の一つである<所有者不明者土地上に公共施設を建設する場合の法的手法>を行政法の観点から検討する課題については、従来からの手法に加えて、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(2018年11月、2019年6月に分割施行)による新たな制度のもとでの取得手法を検討対象に加える必要がでてきた。この円滑法の検討について、(この円滑法の運用の基礎作業となる)同法にもとづいて法務省の委託による戸籍調査を実際に担当している司法書士の方から、その調査の現場で発生している問題の聞き取りをした。この戸籍調査等による長期相続登記等未了土地の解消作業においては、司法書士による戸籍情報の取得に対する自治体の対応方法が不統一で効率の悪いものになっている場合が少なからずあり、これが解消作業を遅延させる原因の一つになっているようである。このような現場の状況の理解も含め、所有者不明土地の問題を、現在進められている相続登記未了問題の解消作業から検討する機会を得たことは大きな収穫であった。また、この円滑法の検討によって、これから進められる円滑法による所有者不明土地の公的取得を法的に検討する複眼的な視座を得ることができたと考える。 今年度は、公物の利用をめぐる法的問題として、各地で多発している集会のための公物使用の不許可処分をめぐる紛争を検討することにも多くの研究時間を費やした。この研究では、不許可処分自体の憲法や行政法からの検討とならんで、その紛争後に当事者となった自治体が、紛争をめぐる裁判を基礎に当該公物の利用に関する公物管理条例を改正している事例(世田谷区二線引畦畔事件、金沢市庁舎前広場事件)を対象として、その改正条例の問題点を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年(令和元年)度は、私の退職年であることから、昨年度が当初の研究計画(3年計画)の最終年であったが、研究期間の1年の延長を認めてもらった。 昨年が当初の計画での最終年であったが、当初の研究計画は、おおむね順調に進展していると考えている。ただし、ドイツ公物法の研究という課題のみは、いまだ達成しておらず、延長を認めて頂いた2019年度の研究期間の最終年で完成させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
自治体において主として用地取得を担当する職員向けに、土地収用にかかわる基礎知識を解説したパンフレットを作成したが、所有者不明土地問題への関心が高まったことで、公表を留保していた。この所有者不明土地の公的手法の部分をさらに加筆したうえで、このパンフレットを公表をしたいと考えている。 ドイツ公物法研究については、近時、新たな日本での研究論文は公表されていないように思われる。このことから、ドイツにおける最新の公物法研究の動向を紹介する研究を公表することを予定している。 さらに、1年の延長期間を含めた科研費による4年間の研究成果に、それ以前の現在でも意義をもつと考えられる自己の研究を加えて、近時の公物紛争を行政法の観点から検討した研究報告書を公にしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画による最終研究年度の次年度が退職年度ということで、退職年に、これまでの長年の「公物法研究」の総括を含めて、今回の研究の成果をまとめたいと考え、次年度での使用を認めていただいた。 さらに、昨年、家族に不幸があり、その看護と死亡への対応で研究作業が遅滞したという事情があった。
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Research Products
(1 results)