2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative research of the fundamental right concerning the normative contents of the family system
Project/Area Number |
16K03313
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
春名 麻季 四天王寺大学, 経営学部, 准教授 (20582505)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 憲法 / ヨーロッパ人権法 / 家族法 / 比較憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治憲法時代は民法で提示される身分法上の基礎となる戸籍制度として、個人単位の国民登録制度ではなく「家」単位での登録制度とされていた。日本国憲法の下では、家族は夫婦と子どもで構成する人的集合体を基本とするようになっていったが、21世紀に入って以降、家族法制に様々な揺らぎが生じていると指摘されている。そこで、そのような揺らぎをもたらした日本の最高裁判例を取り上げて検討すれば、技術進歩がもたらした親子関係をめぐる問題において立法府への法整備を促すもの、伝統的家族像を前提とした親子関係・夫婦関係による差別の問題を取り上げて憲法判断を下すもの、想定外の事態を既存の法律で解決した事件という大きく分けて三つのカテゴリーに分類できることが分かった。それらは、家族・親子関係の問題が憲法論として議論できる土俵を設定したということができるが、憲法判断を下す前提として国際情勢の変化、特にドイツをはじめとする諸外国の制度の内容を取り上げ、違憲判断を導く1つの要因にしている。ただ、最高裁によって、「平成期に入った後においては、いわゆる晩婚化、非婚化、少子化が進み、これに伴って中高年の未婚の子どもがその親と同居する世帯や単独世帯が増加しているとともに、離婚件数、特に未成年の子を持つ夫婦の離婚件数及び再婚件数も増加するなど」から、「婚姻、家族の形態が著しく多様化しており、これに伴い、婚姻、家族の在り方に対する国民の意識の多様化が大きく進んでいる」ことが指摘され、そこから家族はどこに向かうのかが論じられている。これに対して、戸籍制度、あるいは民法によって「家」制度あるいは戦後の「夫婦」関係を中心に展開されてきた割には、家族・婚姻というものの定義がなく、結局、家族はほんとうに個人主義化し得るのかというのが今後の日本における最も大きな問題になるのではないかという問題が残ることになるという点が明らかになった。
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