2016 Fiscal Year Research-status Report
WTO司法機関における非貿易価値の扱い―国際法の断片化現象への対応として
Project/Area Number |
16K03328
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
平 覚 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (20163149)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | カリブレーション / 貿易と環境 / ウィーン条約法条約31条3項c / 体系的統合原則 / WTO / TBT協定 |
Outline of Annual Research Achievements |
非貿易的価値に基づく貿易制限措置のWTO法適合性問題を扱う最新のWTO判例として、「米国―マグロ及びマグロ産品の輸入、マーケティング及び販売に関する措置 メキシコによる21.5条の援用」事件のパネル報告書(WT/DS381/RW)について判例研究を公表した。さらに、同事件の上級委員会報告(WT/DS381/AB/RW)については、経済産業省WTOパネル・上級委員会報告書研究会で研究報告を行った。この事件は、米国のドルフィンセーフ・ラベルのTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)適合性問題を扱い、いわゆる「貿易と環境」の問題に関連して「調整(calibration)」概念を導入するなど重要な意義を有する。 国際法協会(International Law Association)のSustainable Development and the Green Economy in International Trade Law委員会のケンブリッジ会合に出席し、”Harmonization between WTO Law and International Environmental Law”と題する研究報告を行った。そこでは、WTO司法機関であるパネル及び上級委員会が、WTO法を解釈するに際して、非貿易的価値の実現を目指す他の国際法との調和を実現する手法として、ウィーン条約法条約31条3項(c)に規定される「体系的統合(systemic integration)原則」の利用の態様を検討した。 その他、ヨーロッパ国際法学会2016年大会に参加し、本研究テーマに関して同様の問題関心を持つ欧州の研究者と意見交換を行ったが、本研究テーマに関する世界の研究動向について最新の情報を入手する有益な機会となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非貿易的価値に基づく貿易制限措置のWTO法適合性問題を扱うWTO判例として分析すべき重要な判例が数本存在するが、個々のケースのパネル及び上級委員会報告書のページ数が多く、読解に予想以上に時間がかかっているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
関連するWTO判例の読解と分析を急ぎ、また本研究テーマに類似したテーマに関する文献やその他の資料から学説動向を把握し、最終的な論文の全体的構想を練ることとしたい。 国際的な学会や研究会に積極的に参加し、同様の問題関心を有する研究者と意見や情報の交換を行い、問題意識を高めることにより、研究遂行のインセンティブを持続させたい。
|
Causes of Carryover |
為替レートの変動により、洋書の価格が予想よりわずかに値下がりしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として洋書を購入する際に使用する。
|
Research Products
(4 results)