2017 Fiscal Year Research-status Report
障害者権利条約の国内実施における国内人権機関の役割
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16K03331
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
山崎 公士 神奈川大学, 法学部, 教授 (80145036)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 国際人権法 / 国内人権機関 / 障害者権利条約 / 条約の国内実施 / 条約実施機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障害者権利条約の国内実施における国内人権機関の役割を解明することを目的とする。本年度は、(1)条約実施機関による締約国の国家報告に対する最終所見の研究、および(2)オーストリアにおける国際比較現地調査・研究の実施を予定していた。 しかし、(2)は予定通り実施したが、(1)については最終年度の課題とし、(1)の研究のいわば前提をなす「人権条約機関の活動における国内人権機関の役割」に関する研究に取り組み、次の知見を得た。 すなわち、①GANHRIという国内人権機関の国際的連合体が諸国の国内人権機関を束ねる形で極めて活発な活動を展開している。②GANHRIの条約機関や人権理事会の諸活動への積極的参画は、条約設置機関と公的な色彩を帯びた国家機関の国際的連合体との協働という国際社会で活動する機関間の新たな連携関係である。③条約機関の活動への国内人権機関の関与方法には、GANHRIが国内人権機関の連合体として関わる方法と各国の国内人権機関が個別に関わる方法が見られる。④条約機関はそれぞれの関与方法を指定しているが、いずれについても国内人権機関の積極的関与を歓迎し、奨励している。⑤条約メカニズムをいっそう省力化・効率化し、人権条約が設定した国際人権基準を締約国内で実効的に実施するため、国内人権機関の関与はますます重要となる。 (2)については、9月にオーストリアを訪問し、同国厚生労働省ならびに独立監視委員会等の障害者権利条約国内実施機関を訪問し、担当者から同国における同条約の国内実施状況等の聞き取り調査を実施した。聞き取り対象はいずれも専門家であり、同国における同条約の国内実施にかかる根拠法令、実施体制、国内人権機関や市民社会との連携・協働等々に関する情報を入手し、また踏み込んだ有益な議論を交わした。その際、日本における同条約の国内実施体制について情報提供し、感謝された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.初年度の10月に採択が決定したため、初年度予定していたドイツ調査を実施できず、また「条約実施機関による締約国の国家報告に対する最終所見の研究」にもほとんど着手できなかったため、文献収集の作業に集中した。 2.上記「研究実績の概要」に期したように、本年度は、上記の研究のいわば前提をなす「人権条約機関の活動における国内人権機関の役割」に関する研究に取り組み、一定の知見を得た。 3.なお、オーストリア現地調査・研究は予定通り実施し、所期の目的を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「条約実施機関による締約国の国家報告に対する最終所見の研究」を実施する。 2.ハンガリー現地調査・研究およびオーストリア補充調査・研究を実施する。 3.3年度の研究を総括し、研究報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
初年度における研究着手時期が11月であり、ドイツ調査・研究を実施できなかったため、次年度繰越金額が生じ、この影響で2年度目の研究においても、次年度繰越金が生じた。最終年度には、ハンガリー調査・研究とともに、オーストリアの補充調査・研究を実施し、科研費を有効に活用する予定である。
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Research Products
(1 results)