2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03364
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮木 康博 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50453858)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 秘匿捜査 / 証人保護プログラム / おとり捜査 / 潜入捜査 / プライバシー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題である「秘匿捜査の法的規律と手続関与者の保護プログラム」のうち、一昨年度は、とりわけ、手続関与者の保護プログラムを中心に研究し、アメリカの証人保護プログラムについて論文にまとめて公表したが、今年度は、秘匿捜査の法的規律を中心に据えて研究を行った。具体的には、アメリカ・イギリスの規律のあり方を調査するとともに、わが国における判例(最一小決平16・7・12刑集58巻5号333頁、東京高判平20・7・17〔25481655〕、札幌地決平成28・3・3判時2319号136頁〔LEX/DB25542306〕,鹿児島地加治木支判平成29・3・24裁判所ウェブサイト〔LEX/DB25448594〕)を(再)検討し、前2者については、評釈を公表した。また、実務家(検察官)との研究会を複数回開催し、公訴権の観点から、秘匿捜査の法的課題について議論した。検察官との議論では、公訴権の枠内での検討箇所については、異論があり、この点はさらなる検討が必要であるものの、一般に任意捜査の範疇で議論がなされている点については、想定されている捜査手法によって違いうる点を指摘した点は概ねコンセンサスが得られた。具体的には、秘匿捜査は、undercover operationあるいはcovert investigationの邦語訳であるが、その中には、いわゆるおとり捜査のほか、潜入捜査が含まれ、それぞれの問題性も異なりえると考えられる。前者は、国家が犯罪を働き掛ける点などが、後者は、長期間に及ぶ場合などがプライバシーとの関係で別途問題になり得るためである。こうした違いにも着目しながら、強制捜査ないし任意捜査としての規律のあり方を検討する必要がある。今年度のイギリスおよびアメリカの規律を調査結果を踏まえたわが国における規律のあり方の提示が最終年度で総括する課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
比較対象のアメリカ・イギリスの状況については一定程度調査を進めることができた。わが国についても、関連する2本の判例評釈を公表した。 ただし、9月末から体調を崩したことでペースが落ちた結果、比較法に関する成果をまとめ上げて論文として公表するまでには至らなかった。 この点で、「やや遅れている」と自己評価せざるを得ない。 新年度では、残した部分も含め、公表していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新年度は、研究の最終年ということもあり、遅れを取り戻すとともに、秘匿捜査の法的規律のあり方について、アメリカとイギリスとの比較を経て、わが国のあり方を提示したいと考えている。 調査自体は、概ね順調に進められているため、秋を目処に論文を公表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
9月末の体調不良により、ドクターストップがかかり、年明けの2月まで、研究が滞る事態を招いた。新年度は、遅れを取り戻すべく、新たな文献の取得や研究会合の開催を積極的に実施していきたい。
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