2019 Fiscal Year Annual Research Report
Legal Disciplinary Rule of Undercover Operation and Protection Program of People Involved
Project/Area Number |
16K03364
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮木 康博 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50453858)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 秘匿捜査 / おとり捜査 / 公正な裁判を受ける権利 / 証人保護プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、「秘匿捜査の法的規律」と「手続関与者の保護プログラム」に関する研究の残された課題の部分を進めるとともに、これまでの整理を行った。前者については、わが国の議論に多大なる影響を与えたアメリカ合衆国の罠の法理の再検討を行うとともに、同じコモンローの国であるイギリスでは、同様の事案(対象者に犯罪性向がみられない事案)において、当該法理によって解決することを明確に排斥し、「公正な裁判を受ける権利」の侵害を理由に手続を打ち切ることの理論的解明に取り組んだ。「公正な裁判を受ける権利」は、その射程が広く、弁護人依頼権、弁護人立会い権、接見交通権などについては、多くの文献で検討が加えられているのに対し、なぜ、当該権利を侵害することになるのかを正面から論じるものはなかった。したがって、直ちに理論的示唆を得ることはできなかったが、イギリス(他のEU諸国を含む)が権利侵害を問題としているところからは、少なくともわが国の有力説と整合しうる面があるほか、この広範な内容を持ちうる権利がいつ侵害されうるのかを考える契機となった。そこから、秘匿捜査をめぐる法的課題が、すでに検討を加えたアメリカ合衆国にとどまらず、EU諸国においても捜査法に照らした適否の問題としては正面から論じられていない理由を試論としてではあるが導くことができ、詳細は、公刊予定の論文で示す予定である。他方、「手続関与者の保護プログラム」については、今回検討対象とした秘匿捜査の実施国の中で整備されていないのはわが国だけである。もちろん、犯罪情勢や導入される事案が異なるため、軽々に是非を断じることはできないが、関与者およびその関係者を保護するプログラムが整備されていなければ、組織犯罪対策として効果が期待される秘匿捜査ではあるものの、実際には、その期待に応えることは困難な状況にあることやわが国固有の課題があることも明らかとなった。
|