2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03413
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
椎名 規子 拓殖大学, 政経学部, 教授 (20289789)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イタリア法 / ローマ法 / 子の法的地位 / 婚外子 / 子どもの人権 / 子の平等 / 憲法裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
①平成29年度の研究実績としては、椎名規子「ローマ法における婚姻制度と子の法的地位の関係ー欧米における婚外子差別のルーツを求めて」拓殖大学論集 政治・経済・法律研究第20巻第2号47頁~81頁(2018年3月)を挙げることができる。イタリアにおける婚外子差別の背景には、男女の関係として婚姻制度のみを絶対視するキリスト教の思想があるとされる。本稿は、欧米およびわが国の民法の源とされるローマ法において、キリスト教が国教化された後に、子の法的地位がどのように変化したかを研究したものである。本研究は、まずキリスト教の国教化以前に、アウグストゥス帝が社会の頽廃を防止するために、男女の関係を婚姻制度に限定しようとして、家族法の領域に介入したことを明らかにした。そしてその後のキリスト教の皇帝は、アウグストゥス帝の思想を継承し、さらにキリスト教の宗教的婚姻思想によって婚姻制度を絶対視して、子の法的地位についても、嫡出子の優遇政策を確立していった。本研究により、欧米の婚外子差別のルーツが明らかとなった。 ②今年度のもうひとつの研究実績は、椎名規子「イタリア憲法裁判所の「家族観」の変遷ー1960年代の「家族」に関する憲法裁判所判決を通して」日伊文化研究第56号22頁~34頁(2018年3月)である。イタリアは1975年の家族法の改正により、それまで不平等であった婚外子の相続分についての民法の規定を、嫡出子と平等に改めた。この家族法の改正は画期的なものであったが、この改正が実現するにあたっては、非嫡出子の不平等な相続分を定める民法の規定に対して、憲法裁判所が次々と違憲判決を下していったことが背景にある。そこで、本研究では、この憲法裁判所の違憲判決の内容を考察・検討し、さらにどのような時代背景があったかを明らかにした。当該研究により、1975年の家族法改正に対して、憲法裁判所の違憲判決が重要な役割を果たしたことが明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①欧米において、婚外子はかつては非常に苛酷な差別を受けてきたが、その根拠はキリスト教の婚姻制度の絶対政策にあるとされる。当該年度の椎名規子の研究は、キリスト教の国教化により、ローマ法において、子の法的地位がどのように嫡出子と非嫡出子とに分けられたのかを考察した。国家の介入による嫡出子と非嫡出子に対する明確な法的地位の分化は、アウグストゥス時代からであるが、それがキリスト教の皇帝たちに引き継がれたことが明らかにできたことから、研究は順調に進んでいると思う。 ②さらにイタリアの1975年の家族法の大改正の推進力となっのが、婚外子に対する不平等な相続分を定めた民法の規定に対して下されたイタリア憲法裁判所の違憲判決であったことを明らかにできたことから、研究が順調に進んでいると判断してよいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、中世における子の法的地位について研究したい。欧米において、婚外子差別を決定づけたのは、宗教改革後のトレント公会議以降とされる。そこで今後は、トレント公会議におけるローマ教会の婚姻制度への対応と子の法的地位の関係について研究したい。
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Causes of Carryover |
30,918円の次年度使用額が生じた。書籍の購入予定の期日がずれたことによる。この書籍は、翌年度の30年度で購入する予定である。
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Research Products
(2 results)