2022 Fiscal Year Annual Research Report
Deal and Dango Issues in the Public Policy Decision-Making
Project/Area Number |
16K03501
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮脇 昇 立命館大学, 政策科学部, 教授 (50289336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 隆司 立命館大学, 政策科学部, 授業担当講師 (10150765)
横田 匡紀 東京理科大学, 理工学部教養, 教授 (20400715)
清水 直樹 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (20508725)
山本 武彦 早稲田大学, 政治経済学術院, 名誉教授 (10210535)
西出 崇 京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (30513171)
玉井 雅隆 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60707462)
後藤 玲子 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70272771)
藤井 禎介 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (70350931)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 談合 / ディール / 取引 / 密談 / 密室政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内・国際的利益の多元化により合意形成の説明費用が増している。パットナム(Putnum)の「2レベル・ゲーム」の通り、行政府に対して透明性を求める議会の政治力が強い民主主義国の交渉国は、答責性が高まり説得の時間が長くなっている。ところが、秘密決定は批准過程では多様な忖度を生む要因になり、後に対立をもたらす。歴史は、ヤルタ秘密合意から沖縄交渉に至るまで、政治的談合・裏取引をめぐる爾後の解釈の争いが起きやすいことを示している。院内外の政党間競争や国家間競争のもと、均衡解が現状維持となりやすい。それに対して情報制限によって限定主体間で最適解を志向する手法が「取引」と「談合」であるといえる。実際にシミュレーションの実験結果はそれを裏付けている。少なくとも領土問題、歴史認識のようにアイデンティティにかかわる政策課題ではこれらの技法が依然必要である。この種の争点では取引費用や談合の費用は、説明費用に比べて小さいと考えられる。困難な外交政策の課題は、力による変更、談合による平和、連携外交による取引のいずれかによってのみしか解決されえなかった。すなわち透明化が進んでも「談合」「取引」という合意技法は引き続き重要とされる。 問題は、国内・国際両面で情報公開が進み透明的な意思決定が求められているにもかかわらず、複雑化した世界において、為政者にとって政策目標の達成のために「取引」「談合」の合意技法の重要性が衰えていない点にある。この問題関心に基づき国内外の事例を対象として共同研究を遂行し、その成果を『談合と民主主義』(志學社、2022年)として上梓した。本書は、既存のマクロ・ミクロ理論がなしえなかった公共政策研究であり、談合及び取引を問題視してきた民主主義諸国に通底するアートとしての政治・経済手法の限界と可能性を再度吟味するという意義を有する。
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