2017 Fiscal Year Research-status Report
アセアンの文化変容-グロージョナルな規範の競合、協調、共感の考察
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16K03541
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
重政 公一 関西学院大学, 国際学部, 教授 (20362600)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ASEAN / ミャンマー / ロヒンギャ / 難民 / 人権 / 保護する責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
ASEAN加盟国のなかの人権、人道問題をとおしてASEANという組織がどのような変化を遂げているのか、その実証例として今年度はミャンマー(ビルマ)のロヒンギャ問題を取りあげて研究を行った。この問題はイスラーム少数民族ロヒンギャが、多数派の仏教徒から迫害をうけ、自分たちの故郷を追われ周辺国(特にバングラデシュ、マレーシア、インドネシア)に難民、避難民として逃げており、地域社会を越えて、国際社会の問題となっている。この問題が生じている地域に外国人は立ち入りできないため、調査手法として二次文献精査、NGOなどこの問題を追及している組織の刊行している資料、聞き取り調査、またASEANで同問題に関与しているASEAN政府間人権委員会メンバー、元ASEAN事務局の担当者、インドネシア、マレーシア外務省の現役、退役官僚からの聞き取り調査を行った。
文化変容を探求する取り掛かりとして、ASEANが憲章にも明記してある内政不干渉原則が文字通り遵守されているのか(この場合、ASEANはミャンマーの対応には黙認する)、それとも内政干渉原則を形を変えて介入しているのか(この場合、ASEANは同原則を変容させ、柔軟に現実的に対応する)、という2つのベクトルを考察した。その際に、国際社会の「保護する責任」の変容を生じさせる触媒として用いた。ASEAN内で政府組織(主として、ミャンマー政府・軍隊、インドネシア政府、マレーシア政府)、ASEAN機構(主としてASEAN政府間人権委員会)、市民社会アクターなどの非国家的アクターなどの関与から過去数年にわたるこの問題への研究成果の一部は、日本国際政治学会編「ミャンマーのロヒンギャ問題とASEAN」『国際政治』第190号に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中間年の今年はこれまでのミャンマー、特にロヒンギャ問題を中心に研究をおこなった。 フィールド調査が主だった内容であったが、これを踏まえて学会誌に論文を掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ASEANという地域機構における文化変容をこれまでASEANが重きをおいてこなかった人権と民主化(民主主義の伝播)の分野を中心に理論的考察を社会学、文化人類学などの隣接する分野からの知見を導入しながら行う。 また、ロヒンギャ問題の展開は2018年にも起こっており、状況の把握につとめるだけではなく、新たなデータを加味することで国際学会への研究報告論文を執筆、発表するように鋭意傾注する。
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Causes of Carryover |
例年、出席しているASEAN市民社会会議(2018年度はマニラで開催)出席のための旅費、その他の経費を考えていたが、校務のため出席ができず未使用額が生じた。未使用額は次年度の出張経費に充てる。
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Research Products
(1 results)