2016 Fiscal Year Research-status Report
終身雇用・ジョブローテーション・年功賃金のマッチング理論による分析
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16K03547
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒川 義教 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (50338224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジョブローテーション / 終身雇用 / 年功賃金 / 動学マッチング理論 / 企業の利潤 / 世代重複 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まずイントロダクションを作成した。何が背景となる問題なのか、それに対して先行研究はどう答えてきたのか、そして、本研究はどのような貢献を追加するのかを明確にした。次に、基本となる企業モデルの構築・分析を行った。ジョブローテーションに支えられた日本型雇用制度とジョブ特化に支えられたアメリカ型雇用制度を含む全てのケースにおける企業の利潤を計算・比較することで、企業の利潤上最適になり得るのは両制度のみとなることを示した。また、どちらの制度が望ましいかは、将来ジョブが存続するか否かの不確実性やローテーションのコストに依存することも示した。
さらに、29年度に予定していた基本モデルの拡張作業にも着手できた。基本モデルでは、各期において全ての労働者が訓練中あるいは訓練後とする非世代重複の構造であったが、拡張の一つとして、各期において訓練中と訓練後の労働者が共存する世代重複の構造を取り入れて、企業の利潤上どちらの制度も最適になり得ることを拡張モデルにおいても示した。
本研究の付加価値は以下の通りである。(1) Ortega(2001) とは代替的で経験的観測と整合的な、ジョブローテーションに関する企業モデルを提唱する。(2) 金銭的授受を明示的に考慮した動学マッチング・モデルを文献上初めて導入する。(3) 日本型とアメリカ型の雇用システムを統一的に説明できる企業モデルを構築する。(4) 終身雇用と年功賃金がセットであるべき一つの理論的根拠を与える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、予定通りイントロダクションの作成と基本モデルの構築・分析を終えて、当初の計画では29年度に予定していた基本モデルの拡張作業にも着手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、引き続き基本モデルの拡張作業を行う。それと並行して、学会やセミナーで研究経過として報告して、そこでいただいたフィードバックを元にモデルの更なる改訂・修正を行い、29年度末までに論文を仮完成させる予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、数値計算の処理能力を有したパソコンの購入、発表論文やそのレジュメの印刷、及びプリンターのトナーの購入を平成28年度に予定していた。しかし、モデル分析において数値計算を必要とする段階には至らず、また、学会やセミナーで研究経過を報告する段階には至らなかったため、これら予定したパソコン購入費や印刷・プリンター関係費が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度未使用額は、モデルの拡張作業や学会やセミナーでの研究経過報告をする過程で、当初予定したパソコン購入費や印刷・プリンター関係費として29年度に使用する。一方、当初29年度の使用計画としていたもの(関係図書、PC周辺機器、国内外旅費、印刷費)は、計画通り29年度に使用する予定である。
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