2016 Fiscal Year Research-status Report
近世~近代における尾道・橋本家の研究―瀬戸内有力資産家と地域経済―
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16K03796
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
田島 佳也 神奈川大学, 経済学部, 教授 (40201610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂根 嘉弘 広島修道大学, 商学部, 教授 (00183046)
落合 功 青山学院大学, 経済学部, 教授 (10309619)
松村 敏 神奈川大学, 経済学部, 教授 (60173879)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 資産家 / 銀行経営 / 有価証券投資 / 土地投資 / 塩田経営 / 漁業権 / 地域経済 / 土地所有 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)基本的作業として、広島県立文書館所蔵の橋本家文書の帳簿類等を、7月・11月・3月の3回にわたり、デジカメ撮影した。 (2)上記撮影調査の際に、尾道市立図書館において、関連史料の収集を行い、また史料上に頻出の屋敷・寺院などを確認の調査を行った。 (3)3月に尾道歴史博物館保管の橋本吉兵衛「海鶴堂日記」のデジカメ撮影を行った。 (4)7月30日に神奈川大学において、また3月8日に広島県立文書館において、共同研究者による調査報告と収集史料分析報告を内容とする研究会を行い、現時点の理解と今後の課題を確認した。 (5)具体的に判明した橋本家の資産家としての特徴は、明治中期以降は、少数の比較的小規模な事業以外には、地元地域の製造業・サービス業等にあまり投資しておらず経営にもほとんど関与していない点である。また不動産としては宅地所有が中核であり、この規模は比較的安定的に推移するのに対して、塩田・耕地所有を売却によって徐々に減らしてゆき、代わりに増加させた投資としては、外国公債・国債・京都市債・大阪市債・神戸市債をはじめとする公社債投資がきわだった特徴であり、きわめて安全かつ安定的な投資を行っていることが判明した。こうしたリスキーな投資と事業経営を避けるという資産配分は、じつは自ら尾道第六十六銀行などの銀行経営に深く関わっているところから来ている。すなわち橋本家当主の言説からみて、自らの事業経営へ自ら経営する銀行からの融資を依頼する関係融資の誘因が発生することを意識的に避け、銀行の地域に対する責任から、いわゆる機関銀行問題の発生を予防したのである。従来、地方名望家的資産家研究においては、地元企業への投資に着目して論じられることが多かったが、橋本家のように投資や事業経営を控えるのも地方名望家的行動の一つのタイプであるという暫定的な結論を我々は得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本史料の所在は研究準備過程で判明しており、最初の計画に沿って予定どおり史料収集ができていること、および我々の研究の導きとなる先行研究がある程度存在し、かつ先行研究を主導した研究者が本研究の研究協力者として加わっている点があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
とくに基本史料である広島県立文書館所蔵の橋本家文書については、まだデジカメ撮影する必要のある史料が膨大にあり、平成30年度以降もこの作業を集中的に行う必要があることが判明し、今後とくにこれに力を注ぐ計画である。
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Causes of Carryover |
研究協力者に対する旅費支出が、協力者の都合でなかったこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度と同様に、史料収集のための旅費支出が大半になる予定。
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Research Products
(2 results)